【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第87話】

10月10日の午後2時頃であった。

あいつの家で、恐ろしい事件が発生した。

家に竹宮《たけみや》と田嶋組《たじま》の構成員《チンピラ》20人と風早連合《かざはや》の構成員《チンピラ》20人が突然押しかけてきた。

風早連合《かざはや》の構成員《チンピラ》5〜6人があいつをボコボコに殴りつけた。

(ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!)

ももけた腹巻き姿の竹宮《たけみや》は、うつ伏せの状態で倒れたあいつの頭を右足でふみつけながら言うた。

「おいコラクソナマイキナ野郎!!」
「なんだよぅ〜」
「きのう、オンドレの弟が経営していたブラック会社に勤めていたてつやくんが首を吊って自殺したと聞いた!!…オンドレの弟が責任を負えないと言うのであれば、兄であるオンドレがオトシマエをつけるのがスジだろが!!ああ!!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…」

竹宮《たけみや》は、より強い力を込めてあいつの頭をかかとでふみつけた。

あいつは、苦しみながら竹宮《たけみや》に言うた。

「許してくれ〜」
「なにが許してくれや…てつやくんをブラック会社に押し込めておいて何じゃいよんぞ!!」
「わたしは…てつやさんが困っていたから就職支援をしたのだよ!!」
「ウソつくな!!」
「痛い痛い痛い痛い…」
「オドレの弟のワガママのせいで何人の従業員を殺したのか数えてみろ!!オドレの弟はほかにもぎょーさん悪いことをした!!…田嶋《うち》から借り入れた5000万を踏み倒した…他にも大口がぎょーさんあった…それも全部踏み倒して逃げた…どうオトシマエつけるのだ!?」
「許してくれ〜…弟が経営していた会社がブラック会社になった原因は弟にはないんだよ…ブラック会社にした原因は…てめえだ!!」
「なんやオドレ!!ワシに言いがかりをつけるのか!?」
「アニキ、どうします?」
「やむを得ん…このクソガキがワシに言いがかりをつけた以上、生かしておくわけにはいかん…始末するぞ!!」
「へえ!!」

(ドカッ!!)

このあと、竹宮《たけみや》と数人の構成員《チンピラ》があいつを思い切りけとばした。

それからしばらくして、10人の構成員《チンピラ》たちがけいこさんを連れて家の中に入った。

「イヤ!!やめて!!離して!!」

けいこさんはあいつに助けを求めたが、構成員《チンピラ》たちがけいこさんを押さえつけていたので身動きができなかった。

「オラクソガキ!!顔をあげろや!!」

ふたりの構成員《チンピラ》は口もとから泡をふいているあいつの顔をけいこさんへ向けた。

竹宮《たけみや》は、恐ろしい声でけいこさんをイカクした。

「オラ!!てめえのカレの顔をよく見ろ!!」

けいこさんは、口もとから泡をふいているあいつの顔をみたとたんに悲鳴をあげそうになった。

「いっ、イヤ…ひろみち…ひろみち…」
「あんたもバツを受けてもらうぞ!!自分の娘がキツイはずかしめを受けてボロボロに傷ついた状態でお母さんを呼んでいた…それなのに、オドレはクソ野郎とイチャイチャしていた…あんたはそれでも母親かよ!!」
「やめて…やめて!!」
「ふざけるな!!」

(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)

竹宮《たけみや》は、腹巻きに隠していた拳銃《チャカ》を取り出したあと、あいつを撃ち殺した。

目の前であいつが殺された様子を見たけいこさんは、その場にすわり込んだ。

竹宮《たけみや》は、不気味な声でけいこさんに言うた。

「そう言うことで、あんたの幸せも今日限りでジ・エンドと言うことや…」

その後、20人の構成員《チンピラ》たちがけいこさんの身体を押さえつけた。

「イヤ!!やめて!!お願い!!離して!!」

構成員《チンピラ》ふたりは、けいこさんが着ていたジーンズを脱がした。

数人の構成員《チンピラ》は、白のカーディガンを脱がした後、紫と紺のアーガイールのポロシャツをビリビリと破いた。

つづいて、下に着ていたレモン色のインナーも思い切り破った。

(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)

「やめてーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

けいこさんは必死になって叫んだ。

しかし、構成員《チンピラ》たちはへらへらとした表情で嗤《わら》いながらけいこさんを見つめた。

(ブチッ!!)

構成員《チンピラ》のひとりがけいこさんが着ていたブラジャーを思い切りちぎった。

「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

けいこさんは集団レイプの被害を受けたあと、竹宮《たけみや》に首をしめられて殺された。

事件発生から3時間後であった。

(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン…)

阿南市内《まちのちゅうしんぶ》に消防署のサイレンと消防団の詰め所のハンショウが鳴り響いた。

あいつの家で火災が発生した。

火災現場に消防車6台と消防団の車3台が到着した。

到着したあと、合計30人の消防士たちと消防団員たちによる消火作業が始まった。

火災が発生した時、義父母は家出をして行方不明になっていた。

現場に集まったやじ馬たちにまざっていた竹宮《たけみや》は、火災現場の様子を何も言わずにじっと見つめていた。

さて、その頃であった。

アタシ・とし子は、再び女ひとりで生きて行くことを選んで旅に出ることを訣意《けつい》した。

ボストンバッグと赤茶色のバッグを持っているアタシは、JR高松駅のプラットホームにいた。

アタシは、三原市の実家に一生帰らないと訣《き》めた。

この日、アタシの父が撃ち殺された原因が分かった…

原因は、5度目のダンナが入院患者であった男性を殺したことであった。

5度目のダンナに殺された男性は、風早連合《かざはや》の若い衆であった。

撃った男たちは、風早連合《かざはや》の構成員《チンピラ》だった。

父は、武方《たけかた》さんのいう通りに家族のためにせっせと働いてきた人だった…

父は、巻き添えを食って亡くなった…

…と言うことであった。

だけど、アタシは女ひとりで生きて行く…

三原の実家に一生帰らない…

今度は再婚しない…

新しい恋なんかしない…

高松駅のプラットホームにたたずんでいるアタシは、何を考えていたのか?
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