アンコール マリアージュ
この罪を許しますか?!
夜の8時。
駅前のカフェに入って来たカップルを見て、真は立ち上がり深々と頭を下げる。

「急にお呼び立てして申し訳ありません。ご足労頂き、ありがとうございます」
「あ、いえ…」

二人は戸惑いながら、真の向かい側の席に座る。

水を持って来たウェイトレスに、二人がコーヒーとアイスティーを注文したあと、改めて真は名刺を差し出した。

「先程はお電話で大変失礼致しました。私は、アニヴェルセル・エトワールの齊藤と申します」
「え、齊藤さんってこの漢字ですか?では、真菜さんのご主人ですか?」

新郎が、名刺を見ながら驚いた様に聞く。

「いえ。お二人の担当の齊藤とは、たまたま名字が同じだけです。いかがでしょう?齊藤は、担当者としてきちんとやっておりますでしょうか?不手際などございませんか?」

あくまでもにこやかに話をする。

「不手際なんて、とんでもない。真菜さんのおかげで、僕達とても式が楽しみになったんです。いつも親切に相談に乗ってくれて、彼女が担当者で良かったなって、なあ?」

新郎が隣の新婦に同意を求めると、新婦も小さく頷いた。

「左様でございますか。今後も、どうぞ何なりとお申し付け下さい。お二人の結婚式を、私どもも精一杯お手伝いさせて頂きます」
「あ、はい。ありがとうございます。あの…ところで、お話というのは?」

昼間、話があるから新婦と一緒に、家の近くのカフェで会えないだろうかと、新郎に電話をかけたのだった。

いきなり会ったこともない人物に呼び出されて、困惑するのも無理はない。

真は、笑顔を崩さずにこやかに話を切り出す。
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