ベッドの上であたためて
ベッドの端に座って、脱ぎ捨てられていたブラウスに袖を通す。
丸まったストッキングは…伝線していてもう使えそうにないな。
替えのストッキングはあるし、飲み代を奢ってもらったから良しとしよう。
この短時間で、髪も服もすっかりタバコ臭くなっている。
今時タバコを吸っている人なんて少ないだろうに、このホテルはロビーに入った瞬間にタバコ臭く、部屋の中も然りだ。
リニューアルしてあるようで内装はわりときれいだけど、長年染みついた匂いというのは取れないものらしい。
こういう場でバスルームは使わないことにしているから、早くアパートに帰ってシャワーを浴びたい。

「明日仕事?」
「はい」

そっかあ、と残念そうに言いながら、後ろではシャツを羽織るシュッという音が鳴る。
この人だって、ここでゆっくりしていこうなんて思っていないくせに。
熱かった身体があっという間に冷める。
やっぱり、セックスだって酒と同じ。身体が温まるのはほんの一瞬だ。
わかっているのに懲りないな、私。

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