敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
情熱の国で運命の再会


 政略結婚から逃げるようにやってきた、スペインのマドリード。そこで偶然再会したのは、十代の頃に淡い好意を抱いていた相手。

 日本から迎えに来る許嫁を欺くために恋人のフリをしていたはずが、急速に惹かれ合った私たちはその夜、彼の部屋のベッドで甘い空気を共有していた。

「きみを悲しませるような男となんて、結婚させない」

 熱情を宿した彼の眼差しに、もはや嘘やお芝居の色はなかった。

 恋人を演じた短い時間で本物の恋愛感情を自覚したのは自分だけではなかったのだ。

「ありがとう、叶多(かなた)くん」
「もう黙って。余計なことは考えず、俺に集中して」

 甘い唇が重なり、彼の香りに包まれる。

 キスの途中で許嫁から電話がかかってきたけれど、「気にするな。焦らせておけばいい」と、彼はよそ見を許さなかった。

 服の中に滑り込んでくる大きな手に、今まで誰にも見せたことのない場所を弄られ、心と体が昂っていく。

 蕩けた場所に彼を受け入れると、甘い痛みが全身に走った。

 親の決めた政略結婚に背くだけではなく、叶多くんと私は長い間お互いの父親に『近づくな』と言われていた、因縁の相手。

 なのに……。

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