敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
離れていても募る想い――side叶多

 父に美来を紹介されたのは、八年前。今と同じく夏の季節に大使公邸で開催された立食パーティーだったと記憶している。

 スペインに進出している日系企業の関係者が多く参加していて、城後都市開発と八束グループも、これからオープンさせる予定のホテル事業への期待から、招待されていたようだ。

 四つ年下の彼女はまだ高校生だったが、胸元がレースになったミントグリーンのロングドレスを纏い、落ち着いた様子で父親である八束社長の隣に立っていた。

 そのときはさほど緊張していないように見えたが、他の参加者への挨拶もひと段落しふと辺りを見回すと、居心地悪そうに会場の端に立っている彼女に気づく。

 浮かない表情とは裏腹に、皿の上にはスイーツがてんこ盛り。

 その光景がおかしくて彼女にちょっとした興味を持つとともに、同じ日本人として話し相手になってやろうと彼女に声をかけた。

「美来さん」
「あっ……ええと、城後さん?」
「叶多でいいよ。それ、全部食べ切れるの?」

 からかうように皿を指さすと、美来がかぁっと頬を赤く染める。

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