敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
家族と一緒なら

 桜の花が景色を彩る三月の下旬、私は予定日から二日遅れで、男の子を出産した。

 病院に着いてから半日以上も産まれなくてうんうん唸ったけれど、出産自体は安産。

 出てきてくれたのが夜遅くだったため、仕事を終えた叶多くんも駆けつけ、立会出産が叶った。

 彼は元気な産声を上げた息子の姿に瞳を潤ませ、大仕事を終えた私には何度も『ありがとう』と伝えてくれた。

 息子の名前は、(つばさ)。なににも縛られず自由に生きてほしいと言う願いを込め、ふたりで相談して決めた。

 両家の親ももちろん大喜びで、揃ってお見舞いに来てくれたときには、翼を誰が抱っこするかで、父親同士が少々揉めていた。

「この子は城後家の内孫ですぞ」
「産んだのは私の娘です」

 小さなベッドを囲んで言い争う父たちに呆れて、私や母たちは苦笑する。

 すると、彼らを窘めようとするかのごとく、翼が「ふえぇっ」と泣きだし、父たちはハッとしたように顔を見合わせる。続けて蕩けそうなほど目じりを下げ、翼の機嫌を取りだした。

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