好き……その言葉が聞きたいだけ。【完】
3
 あれから二週間が経ち、新田はあの日以来学校を休んでる。

 それもあってか私は平穏な学校生活を送れていた。

「律、ただいま~」

 学校帰り、スーパーに寄って食材を買って来た私が律の部屋に入った瞬間、一瞬目眩がした。

「何で? 昨日掃除したばっかりだよね?」

 昨日綺麗に掃除をして帰ったはずの部屋が、目を疑う程に散らかっていたので、一瞬声も出なかった。

「んー? 探しモンしてたんだが、見つからなくてなぁ……」

 そう言って探し物が見つからないと諦めたのか、律は窓際に座り込んで煙草をふかしている。

(ってか、探すのやめてんじゃん……)

「何探してるの?」
「この前、井岡がくれた紙」
「それって――」

 言われて思い当たる私はすぐ横にある棚の引き出しを開け、

「これの事?」

 一枚の紙を律に差し出す。

「お! それだ。何だよ、そんなトコに入ってたのか」

 私から紙を取った律は納得すると、新しい煙草に火を点けようとした。

「律! 煙草吸う前に片付け!」

 そんな彼からすかさず煙草を奪い取った私は片付けをするよう促す。

「何だよ、いいだろ? 一本くらい」
「駄目! ってか今さっきまで吸ってたでしょ? いい加減吸いすぎ!!」
「ちっ」

 怒る私に怪訝そうな顔を向けて舌打ちをする律。

 納得のいかなさそうな律を再度促し、私たちは部屋を片付ける事にした。

「…………」

 ――と、片付けを始めたはいいものの、

「何だよ、俺だって一生懸命やってんだぞ?」

 相変わらず片付けの苦手な律に、思わず呆れてしまう。

(何で片付けてるのに散らかってるんだろう?)

 ビールの空き缶を片付けるよう言ったら少し残ったビールを床に溢すし、古い新聞と雑誌を纏めてって頼んだら束にした物崩すし、一向に片付く気配が無いのだ。

「もう、私やるからいいよ」

 そんな惨状に呆れ果てた私は一人で黙々と片付けに取り掛かる。

 そんな私を眺めながら煙草をふかし始めた律。

(あ、また煙草! 全く、油断も隙もない)

 煙草は正直好きじゃない。匂いつくし、煙臭いし、ヘビースモーカーな律の健康も心配だから。

(けど、もう慣れちゃったんだよね、匂いとかも)

 健康の為には辞めさせたいけど、多分それは無理だろうからせめて本数くらいは減らして欲しいとは思う。

(それに、キスした時に煙草の匂いがするのって、何だか大人な感じがして、ちょっと好きだったり……)

 そんな事を考えながら、ひたすら片付けていたら、結局一時間近く掛かってしまっていた。
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