紫陽花が泣く頃に
8 きみとなら雨に濡れたい


降り続いていた雨がやんで一年。私たちは高校二年生になった。

新たな学年、新たな教室。とくに不満はないけれど、強いて言うのなら……。

「なあ、お前らって付き合ってんの?」

前の席の坂口がうざいことくらい。

雨がやんだあと、私たちの心だけじゃなくて町も変わった。シャッターが閉まっていた商店街は活気を取り戻し、この高校も合併することなく無事に存続できることになった。さらに一度は離れていった住人たちが戻ってきたことも大きい。坂口もそのひとりだ。

「……ち」

何度も同じことを聞いてくる坂口に舌打ちだけを返す。すると彼は私の隣の席の人に助けを求めた。

「お前の彼女、怖いんだけど」

「……はは」

否定することなく、苦笑いしているのは小暮だ。

引っ越してしまったクラスメートが何人か帰ってきたことで、またクラスはA組とB組に分かれることになった。もちろん学年が上がる際に、クラス替えが行われたけれど、私と小暮はまた同じクラスになり、なんと席まで隣同士になった。

私たちが付き合っているという噂は、菅野が流した一件以来、ひそかに継続している。

この一年間で否定できるタイミングはいくつかあった。でもお互いにしなかった。まあ、いいかという楽観的な部分も似てる私たちなので、そのまま放置してしまってる状況だ。

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