転生公爵令嬢のイチオシ!
新たな転生者

「それでね、お兄様ったら」

『メリアは可愛いから何でも似合うね』
『こちらも美味しいよ。食べさてあげようか?』
『足元に気をつけて。お手をどうぞ、私のお姫様』

「なーんて言うのよ!里英ちゃん!」

口元に手を当ててグフフと笑う。

「そう」

「甘いものが好きなんて可愛らしい一面もあったり!エスコートの仕方もスマートだし、私をお姫様抱っこした時の逞しさも素敵だし」

「…」

「それでね、街にいる女の子達がみんなお兄様を見てるの!そりゃあんなに麗しいお兄様は見ちゃうわよね!?二度見じゃなく五度見くらいしちゃわよ!」

「…」

「でもでも!私のイチオシのお兄様なのよー!!ってお兄様の腕に抱きついて見せつけてやったわ!!」

「……」

「今度はね、ピクニックに行く約束をしているんだ!楽しみ!あー!どうしてここには携帯がないのかしら!お兄様とのデートの想い出をその場でたくさん写真に撮りたいのに!」

「もうメリアーナじゃなくて芽衣のままでいくつもり?」

「ヤバッ!興奮すると芽衣全開になっちゃうよ!」

「まったく、気をつけなさいよね」

「私は公爵令嬢メリアーナ、私は公爵令嬢メリアーナ…」

学園の人の少ない屋上のベンチに座り里英ちゃんと気兼ねなくお喋りしていた。



「…イチオシ社、朝礼始めます!社訓その1!」

「!!」
「!!」

「お客様への誠実さ、そして常に笑顔と…」
「お客様への誠実さ、そして常に笑顔と…」
『お客様への誠実さ、そして常に笑顔と…』

「!?」
「!?」

条件反射で社訓を言ったあとで里英ちゃんと顔を見合わせる。

うしろを振り向くと薄い緑色の長い髪をハーフアップにした黒い瞳で清楚な感じの女の子が立っていた。

「お久し振りね。転生前からだと、どのくらい振りになるのかしら?」

「ということはあなたは…?」

「私も元イチオシ社の者よ。田口早苗よ」

「えええ!?」

「経理の早苗様ですか!?」

「お疲れさまです!!」
「お疲れさまです!!」

そして条件反射で口から挨拶が出た。深々と90度で最敬礼!

ふたりしてびっくりした。
転生者で日本人で元同じ会社というのも驚きだが、同じ社内の人でもまさかまさかの経理の早苗様!!

誰しもが早苗様に逆らうことはない。
提出書類に不備があってはならない!
期限は絶対に守れ!1日のズレも許さない!
繁忙期のピリピリオーラがハンパない!!
眼鏡の奥のその鋭い瞳に誰しもがビビる。

その名もイチオシ社の経理の早苗様!!

ま、まさか同じこの世界に、学園に、そして同じクラスにいたなんて!!



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