オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
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その時、私は四角い箱の隅でひとりうずくまっていた。

天井は高いけど、定員は5人なのだから面積は狭い。

勘弁してほしい。

私は5階にある行きつけのネイルサロンへ行こうとしていただけなのに。

エレベーターに乗って5階のボタンを押しドアが閉まった直後、落雷の音がして停電したのだ。

当然ながら電気は真っ暗になってしまい、スマホの電灯アプリで明かりを灯したけど、ボタンを押してもドアは開かないし動くこともない。

非常用ボタンも何度も押したけど、どこにもつながらないし誰かが駆けつけてくれる気配もない。

停電がおさまれば動くだろうと辛抱強く待つこと早2時間。

全く状況は変わらない。


「もうやだぁ…」


ボソッと漏れた独り言がエレベーター内でやたらと響くのすら恐ろしい。

半泣き状態だ。

このエレベーター自体だいぶ古そうで、そのうち壊れるんじゃないかといつも他人事のように思っていたけど、まさか自分が乗っているときにこんな状況になるなんて思ってもみなかった。

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