オレンジ服のヒーローは全力で彼女を守りたい
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私が勤めるエステサロンは、3階建てのこじんまりしたビルの最上階にある。

1階は喫茶店、2階は美容院になっていて、古い建物だけど中はリフォームしてあってわりときれいだ。

専門学校を卒業して就職して2年。

やさしい店長と常連客に恵まれて、とてもいい環境で仕事をさせてもらっていると思う。

サロン内はカウンターと待合のソファ、メイクルーム、カーテンで仕切られた施術スペースがふたつ。

施術が個室じゃなくてよかった。

狭い部屋にこもるのはやっぱりまだ怖い。


「ねえあおいちゃん、お見合いしない?」

「へ?」


開店前の準備中。店長の唐突な言葉に、思わず鼻から抜けるような変な声が出た。


「私の姉の子なんだけど、システムエンジニアをしてて、全然出会いがなくてね。
紗知ちゃん、彼氏も好きな人もいないって言ってたからどうかなって」


上目でうかがうその表情にかなり期待がこもっているのがわかる。


「叔母の私が言うのもなんだけど、顔はけっこうかっこいいと思うの。
性格も穏やかでやさしい子よ」

「そりゃ、店長の甥っ子さんなら整った顔立ちなのは間違いないですよ」

「あら、そんなこと言ってもらうと照れるわ」


店長はおばさん同士の会話のように手を折り曲げる。

決してお世辞じゃない。

店長は今年50なのに、それよりずっと若く見える。美魔女というやつだ。


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