見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~

side 伊織

ふ、乃愛が赤い顔でびっくりしてる。
そりゃあそうか。北見さんも他のスタッフもいるんだもんな。


「緊張、とけた?」

「あ、うん……ありがと」

「つーか俺がキスしたかっただけなんだけどな」

「もぉ……ふふっ、大好き」

ドレス姿の超絶可愛い乃愛に、そんな照れて「大好き」とか言われたらさ…もっとしたくなるじゃん?

だから。

「舌、入れていい?」
そう耳元で言ったら乃愛の顔がボンッて一気に赤くなった。

「ふ、ごめんごめん。それは後でな」
半分マジで言ったんだけど、可愛すぎてクククと笑いを隠せなかった。

実はこれ、諒さんとの会話の中で聞いてたエピソード。

『入場の前さ、麻依が緊張してたからキスしたんだよね。そしたらびっくりしてたんだけど、それで肩の力が抜けたみたいでさ』って。
だから、もし乃愛が緊張してたら、俺もキスしようと思ってたんだ。

あと『隙あらば何度もキスしたけどね。だってどんな麻依も超絶可愛かったからさ、フッ』と諒さんがカッコよく言うもんだから、俺も見習おうと思ったのもある。


それにしても、今日の乃愛はマジで可愛い。可愛すぎる。
少し前に写真の前撮りもしたからドレス姿を見るのは初めてじゃないけど、それでも…すげぇドキドキする。

はぁ……ほぼ身内だけにしといてよかった。
こんな乃愛を他の男になんか見せたくねぇよ。
…つくづく諒さんの気持ちがよーくわかる。

実は、他の既婚のヤツにも結婚式がどんなもんなのか聞いたんだけど、そいつは、やれ準備が面倒だの披露宴で酒を飲まされて大変だっただの、終いには、数時間の為だけにあんな高い衣装だぜ?とまで言い放っていた。

片や諒さんからは、麻依さんとの結婚式を楽しもう!という気持ちで溢れていて、麻依さんへの溺愛を隠さずに、いつも事細かに話してくれたんだ。

ほんと、諒さん一家とは偶然だったけど、俺にとっては、…いや乃愛にとっても、人生に良い影響を与えてくれる嬉しい出会いだったんだ。


そんなことを考えていたら、北見さんが俺達の方へ向いた。

「ではもうすぐ曲が流れますよ。扉が開いたらお二人で一礼して、ガーデンの奥の梨本さんがいる所までゆっくり歩いてくださいね。私もここから見てますよ!」

なぜナッシーがそんなとこにいるのかというと、ナッシーが司会者兼司祭役だから。
これも諒さん達の話を聞いて、プロの人じゃなくて親しい友人に頼みたいと思ったんだ。

なんか諒さん達の真似ばっかで嫌な気持ちにさせてしまうかな…と思ったんだけど、諒さんも麻依さんも〝それは真似じゃなくて、選択肢の中からそれを選んだだけだから〞と言ってくれて、すげぇ気持ちがラクになった。

ちなみに〝誓いの言葉〞や〝結婚証明書〞も参考にさせてもらって、俺と乃愛らしいものを作り上げた。
ほんと、マジでこんなに楽しいとは思わなかった。


「それでは扉が開きまーす。ハイ、いってらっしゃい!」
という北見さんの声で、俺達の結婚式が始まった。
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