愛が溢れた御曹司は、再会したママと娘を一生かけて幸せにする

プロローグ

　初めて出会った日は、お互いの顔と碓氷遼生(うすい　りょうせい)と渥美萌(あつみ　もえ)という名前しか知らなかった。

　次に会った時に笑った顔を初めて見て、共通の趣味を持っていることが嬉しくなって、頻繁に会うようになった。
　会うたびに彼の言動に胸がときめき、些細なやり取りから人となりを知って次第に惹かれていった。今思えば、彼に片想いしていた頃が一番幸せだったのかもしれない。
「愛しているよ、萌」

　身体を重ねるたびに囁かれた愛の言葉。私に触れる手は優しくて、遼生さんに抱かれるたびに愛されていると実感することができた。

　優しくも私の弱いところを責め立てては、妖艶な表情で私を見下ろす表情にいつもドキドキさせられてばかりだった。

　誰かを好きになったのも、手を繋いだのも抱きしめてもらったのも、キスをしたのも、身体重ねたのも全部遼生さんが初めて。
　この先、長い人生が待っているとわかっていても彼以上に好きになれる人と出会える気がしない。

　そう、思っていたのは私だけだったんだ。