あたしがわたしに変わる頃〜夢から目覚めて眠る瞬間〜

あたしがわたしに変わる頃〜夢から目覚めて眠る瞬間〜

KISEKI NAKAYOSHI SPECIAL FILE 003

KISEKI NAKAYOSHI EDGE

To dear ones Than dear ones

Same Shine Same Star

今作あたしがわたしに変わる頃の全ての登場人物に愛を込めて

この物語は創話(つくりばなし)創話(そうわ)です

あたしがわたしに変わる頃
~夢から目覚めて眠る瞬間~
When I change to me
The moment you wake up from your dreams and sleep


Re:ACT


 物語はマンションが建ち並ぶ、閑静な一軒家から始まる。
 両面開きの窓のカーテンの中央部の隙間から朝の陽の光が差し込んでくる。
 二階の部屋では一面鏡張りの大きな鏡に向かって、男が全裸でマスターベーションをしている。
 3・・・2・・・1
 フィニッシュ!
 鏡に付いた精液を拭き終えると、男は部屋を後にし風呂場に向かった。
 部屋を出ると三階にあるバスルームに向かう
 右と左に設けられている弓なりの階段の右側から階段に敷いてある、赤茶色の絨毯と階段との隙間にできた空洞を、足の指先で何度かなぞった。
 バスルームにたどり着くと、予め湯船に湯を張った状態で男は全裸のまま湯船に足を浸けた。
 曇りガラスの向こうから差し込む朝陽がバスルームの男の元に伝わる。
 少しすると、女がツンツンにはねた髪で全裸でバスルームに入ってきた。
 浴槽に浸かっている男の後ろに足を入れて、男の後ろに座った。
 女は後ろから男の歯を歯ブラシで磨いてあげる。
 男は女に黙って湯船におしっこをした。
 女は男に黙って湯船におしっこをした。
 振り返り男は女の肩を抱くと、湯船の中に身を沈めた。
 ゴボゴボゴボプハー。
 女は水面から息をしようと飛び上がった。
 少しして女が言った。
 「おしっこ出た」
 「うわっきたねえ」
 バスルームを出ると二人は次に洗面台の、二人がすっぽり入る、大きな鏡台の前に立つ。
 男の名前は<聖(しょう)>女の名前は<法(のり)>
 法はキティーちゃんの歯磨き粉で歯を磨く。
 飼い猫の<黒猫のミー>と<白猫のシー>。
 ミーが法の足。シーが聖の足に尻尾を絡ませる。
 聖は自分の営む、鏡屋の隣の<大阪弁教室の講師>に教えてもらった、口角の矯正にと「あ~ん」までを鏡の前で二回繰り返した。
 法も出かける準備をする。
 ボサボサの髪に櫛を
 無い眉をある眉に
 口紅に朱を
 乳首に色を


Re:BCT


 二人は出かけ支度を済ますと、聖は自分の営む都内の鏡屋へ。
 法は街に用事を済ませに。
 駅まで聖のブルーのオープンカーで送ってもらう法、
 法が聖の肩を抱いて車は行く。
 駅に着くと車を降り、仕事場に向かう聖に手を振る法。
 聖は、クラクションを鳴らし、ハザードランプを5,6回点滅させると、ワイパーも一回振って手を振った。
 法は聖の車が見えなくなるまで、手を振った。
 その間も法の目には小さな点になっていく聖の姿は映しだされていた。


Re:CUT


 地下鉄の中、聖に携帯電話から連絡する法。
 「もしもし」
 「何してたの?」
 「馬」
 「何食べたの?」
 「牛と米」
 退屈な返事が聖から返ってくる。
 「ねえ永遠を感じたことある?」
 「ない」
 「じゃあ宇宙は?」
 「ある、かな」
 「宙に浮いて寝るのと壁の中にズブズブッて入って寝るのとどっちがいい?」
 「壁」
 「えーアタシは宙に浮いて寝る、だけどな~」
 プツリ・・・・・・
 電話を切られてしまった。
 クシュンと寂しそうな顔で携帯電話を見つめる法は少し気が立ってもいた。
 その場で大きく伸びをする法。
 そのほうの腕を掴んできた男がいた。
 驚いた法は男の手を振りほどこうとするが男は法の手首を掴んだまま法の脇を凝視する。
 「ちょやだ離して!誰かー」
 法が大声で助けを呼ぶと別の車両から<駅員>が現れて、男を制した。
 駅員に制された<名前不詳>は、逆向いた目を法から背けると、別の車両に姿を隠していった。
 駅員が法を気遣うが法は握られていた側の手首をもう片方の手で庇うように名前不詳が隠れていった車両のほうから目が離せなかった。
 目的地の地下鉄にて、法が歩いていく方向とは逆に地下道の障害者専用通路の上を、所狭しに一列に並んだ作業用の<人工知能の一群>が、剥き出しの骨格を露にしながら通り過ぎて行った。
 駅に着くと、目的地に向かった。
 昼下がりの、昼食時を過ぎたファミリーレストランに入った。
 <ウェイトレス>が注文を聞きに法のもとに来て尋ねた。
 法から目を逸らさず、しかし決して冷水器から水をコップに注いでいる手元は見ず、笑みを忘れず法に微笑みながら。
 「注文がお決まりになりましたら、そちらのチャイムでお呼びください」
 そう言い終えるとファミレスの受付付近に戻っていき、そこに留まった。
 昼も過ぎているということもあってか、ファミレスの中は閑散としていて厨房から今だ、と言わんばかりに洗い物の音が法の耳にはしたなくも聞こえてくる。
 窓の外の向こうで街行く人々の様子が法の目には残像のように見えた。
 三食ちゃんとるよりも、こんな時間に気ままに、人目を気にせず競って急かして食事をとるよりも、一人気楽にゆっくりと流れる時間の中で取る食事のほうが法にはよっぽど健康に思えた。


Re:DCT


 スマフォアプリで友達に勧められた本を読んでいた。
 <松田かたつむり>と<石崎コンロ>の魅惑の果実という本だ。
 内容は、というと。
 東京に出張に行った旦那から連絡があった。なんでもスマフォの充電がないらしく久しぶりに公衆電話を探して掛けたよと、「筍が旬でさー忙しい」と。あーそういう事かと私は察してそのままネッシーくんとネス湖に寝静まった。
 ♪DBZヤムチャがやられた時DBZ本当は衝撃だったDBZみんなで笑ってるけどDBZほんとは衝撃だった90年代リレーションシップ♪
 女子高生が、31のトイレ下痢ピーでゲラッ
 女子が云うにー。
 うちの姉夫婦は狂ってる。子供を椅子に紐で縛りつけて食事するなんて!母さんおれは絶対に付き合わないよ!弟の息子の気持ちもわかるが姉である娘の気持ちもわかる。
 相手の家族とビデオ通話している携帯電話を、ベッドの上に投げてネクタイを外し缶ビールを開けた。
 地元の駅は活性化を繰り返していた。近くにある今は共学で、昔ギャル校だった生徒は駅の花じゃった。
 格闘技の中継で鼻血出している人少ないけどあれ嘘の戦いのVTRだから、あんなことしている人たちいないから基本。という空想。
 豊胸とかあるけど、あれ嘘だから、胸を大きくしたのも関わらず、その上に乳首が乗ってるなんてありえないから。
 ユーミンが一人CD(スィーディー)と喚起していた。
 渋谷系女子は原宿の近くのロッカーで、赤やピンクのロングブーツに履き替えると竹下通りで青春を闊歩した。
 収容施設にて。「お前はよ出ろや」「ええんじゃわしはこーしてラジオで日本が宇宙征服した時の玉音放送聞くんじゃ」!!「お前はよ出ー!」
 目の前の男に血判状を作れと言われている中、後ろで助けに来てくれた男と相手の一派の男がボクシングの構えで入った入ってないと言い合いしてて、目の前の男にしょうがなく血判状を作ることを承諾して、指先を切ってくれと頼むが「バカかそれじゃあ傷害になるだろ」と偉そうにに説教されて渋々自分で指を切って血判状を作った。
 どーもーテレビデオなんですけど~。いやーついに我々の時代が来ましたね。ね~
 あの人はちょっと痛なところがあって。
 よーしオナニート星に行って地球でここ。
 映画館には二階が存在するところがあり、そこに自分の車椅子に乗った青年がいつものように眺めを独占しようとしていた。だがその日のそこには、映画を観ながら座った女が男に前から突かれながらSEXをしていた。驚いた青年のことなど気にせず恍惚の表情で男とSEXしながら映画を眺める女がいた。
 他都道府県にいて東京のデリヘル呼んで留飲を下げる。
 これがすべてじゃ!!それじゃあだめなんじゃ?そういう父の世間知らずな所が子供の頃本当に疎ましかった。
 今頃。あの娘車でカーディービーでも聴きながら、東京に行ったなみへいの事でも思ってるかな。
 いきものがかりのホリメグ。歌ってる顔が官能的で満点。
 BABYMETALちゃんたちがブンブン、ステージで歌って踊った後、控室に帰って靴を脱いでいる姿にInspire
 アヴリル・ラヴィーンがいっとき最近彼女太ったじゃん、とか思ってると彼女がソファで寝そべって、あのアヴリルがぷにぷにな躰で胸を手で押さえながらもう片方の手でタダで見んなよファックと言ってる姿はエロい。
 Awichちゃんはプライベートの時のイギー・アゼリアにソツクリな一面があってグッド。
 テイラー・スウィフトが彼氏との海での水着写真。人工知能でもないテイラーの水着のウエストラインは赤ちゃんを産む女性だからかビキニのウエストラインが男性のトランクスパンツよりハイウエストじゃなくて低めで一番そそる。
 セレーナ・ゴメスの音魂(おとだましい)、オトダマのハミングの音色は良い。
 大体幽体離脱とかってマンションとかどうするの?上の階人の家じゃんゲラッレオパレスとかのベッドが同じ位置なら上の人すり抜けていくの?ゲラッ大丈夫らろちゃんと窓から出ていくからゲラゲラッ
 豹皮?!豹皮ちゃうわ豹柄や芦屋のマダムか?!バーキン?!バーキン?!
 前歯が抜けたチョイにいちゃんたちがワンカップだと言ってた頃からワンパックだとタフに生き抜いていた。
 北斗の拳のシンとケンシロウのシーンはある意味ドエロイ。
 キン肉マンのラーメンマンとブロッケンJrのシーンはエグイ。
 キン肉マンのウルフマンとスプリングマンのシーンはドグロい。
 え?美術の印象派と抽象派の抽象を中傷と思っている人がいるらしい?!あと抽象派の意味あんまり知りませんという陰から中傷派が派生した様子がある?!逆に印象派は何を対象にしているかわかり易いので意見も論議もしやすく、抽象派はなんとも言えんというところから?!
 あっ!逆さ鏡だ!ウケウケるんですけど。昔おばあちゃん家(ち)にあった。これ顔とか左右逆のアタシ?!ウケ
 夜七時になると東京を中心とした日本のTVが点く。
 ああ短編小説の神様星新一先生。
 生活保護日を待ちながら老いぼれてくのはごめんだ。
 ボストンバッグみたいなステーキをフッ素水で虫歯のない歯でイーっとして。そんな淫靡な文を書こうと思ったら、アメリカのニューヨークに行った人の話では、レストランに入りステーキとコーラとライスを頼んでめちゃくちゃ美味かったらしい、美味そう・・・・・・
 何とも言えない本だった。


Re:ect


 レストランで食事を終えて法は人込みの街の中、進んでいく。
 錆びれた裏路地では<ホームレスの男二人>が会話をしていた。
 「この街の警察署の裏にヤクザの事務所がある」
 「この世界の仕組みなんてそんなものさ」
 裏路地を抜けると昔、日焼けサロンだった、今はホームレスのシェルターになっている宿泊施設の一階。
 狭い階段を上って法は二階に向かう。
 階段の壁は両手を広げるには狭くギシギシと狭苦しさを感じる。
 二階の受付にたどり着くと、受付にはヒッピー調の男が座っていた。
 法はホッっと飛び出し男の前に姿を現した。
 男はキョトンとして法を懐疑の目で見た。
 「なんだオマエ?」
 男にそう言われた法は男に問いかけた。
 「ウチウチ、<工(たくみ)>何年ぶりだっけ?」
 テーブルを叩き、工、と言われた男は起き上がると法に力任せに声をかけた。
 「オマ、法か?!いや久し振りだな、元気か?」
 「元気よ、工も元気だった?」
 喜んだ工は力加減する様子もなく法の背中をガシガシと抱擁とういう名目で叩いた。
 「イタタタタ、痛いって工」
 目をぎらつかせて工は久しぶりの再会に興奮の様子を隠すことなく法に迫った。
 「ハハハ悪かったな、それよりもあの頃からオマエと仲良くしてたあの男、名前なんだっけ?」
 「聖よ、幼馴染みの名前なんで忘れるかな」
 「そうそう、そのシュウ」
 「聖よ、今一緒に住んでる。あの、これなんだけど」
 取り出したのは法が大切にしている写真だった。
 工に手渡した。
 「なんだこれ?フィルムアートかなんかか?」
 モジモジしながら法がこたえた。
 「これ貼っておいて欲しいんだけど、いいかな」
 工はそう言った法の言葉の次には、もう行動に移していた。
 「貸せ、これこの後ろのコルクボードに貼り付けておいてやる」
 「ありがとう工!」
 「十枚ぐらいよこせ、受付の小物入れに入れとけば誰かの目に届くだろ?」
 「工マジサンキュ!」
 にかっと笑った工の姿にその昔、法は惚れていたのだが・・・・・・
 「ぢゃあ次行くねヨロヨンキュース」ヨロシクに4649の数字を当てたヤンキー語が近年のギャル男語のシクヨロになって、今法が言った、ヨロヨンキュース=46493に一周回って言葉になっていった。そのうちの将来にはこの彼女や彼たちが大人になった頃には、ヨロヨクとか定着してそうな勢いだ。
 背を向けて工の営む、ホームレスのシェルターから去っていく法。
 背中越しの法に声をかける工。
 「オイ!」
 階段の途中でビクッと肩を揺らす法。
 言葉を続けた工。
 「オレたちの時代は!?」
 こたえた法。
 「ボクたち!アタシたちの時代は!わっわっわっわっ」
 そう言いながら法は階段を下りていく。
 法の姿が消えてなくなると工は引き出しから煙を取り出し、口に咥えると煙を吐き出し黄色い目をうかつかせた。


Re:FCT


 お洒落をして法は今日街に来た。
 最近設営された、Wi-Fiタワーの前でモデルの仕事である。
 東京となぜか広島に三塔ずつ東京には渋谷、新宿、池袋に一つずつWi-Fiタワーが区内全域に電波を通して、スマフォやPCの手助けをする為、二十メートルの高さで在った。
 衛星から区内全域にWi-Fiを飛ばすものだった。
 Wi-Fiタワーは全面が白色で作られていて、その面の上に電光掲示板でSONYやSoftbankやHUAWEIなどの一流メーカーが所狭しと横にスクロールして流れていた。
 巨大なスーパーコンピュータとして、区内全域のWi-Fiの要としてある。
 Wi-Fiタワーの前で色んなポーズをしてカメラマンにOKを貰う法。
 一番いい姿は結局、Wi-Fiタワーに凭れ掛かりながら、スマフォをWi-Fiに接続して待ち合わせをしている風な姿が時代に一番マッチしていた。
 Wi-Fi タワーには電照パネルが細部に埋め込まれていて、信号が変わるとパネルに細分化された<モデルの俳優>が、サーッと砂埃が吹き飛ばされたたように散り散りになって、姿を消しては次のトピックが街に明るみと安心感を{齎|もたら}していた。
 Wi-Fiタワーの前での撮影を終えると、<カメラマンたち>に別れを告げると法は、日焼けサロンの店の前に立っていた。
 玄関口にはセキュリティーの<警備員>が立っていて、店の中にあるロビーは四方に渡ってバスケットボールが出きるほどの広さだった。
 玄関先で中の様子を伺い中に入っていく法。
 店の中の受付にいた女が法に気づいてこちらにやってくる。
 法に声をかける。
 「あんた、ゴン美じゃないのさー?」
 法はこたえた。
 「アキさん!オッス」
 新着の洋服を父親に見せるように法は<アキ>の前に元気よく現れた。
 「どしたの?懐かしいね、覚えてる?よくアタシと<ミカ>とゴン美で三人してコンビニの氷食べたよねー」
 笑顔になってこたえる法。
 「覚えてる!ミカさん元気かな」
 「会ってないからなー」
 「アキさん、あの当時なんで男の子から白マリモってあだ名付けられてたの?」
 「懐ー)、アタシが白マリモでアンタがゴン美。ゴン美はいつも日サロ行くっていってゴン黒にしてたからだよね。アタシはツンツン坊主で髪白くしてるときあったからね、それで。それにしてもあだ名って、普通愛称とかって言うじゃない?昔よねー」
 少し反論して法はこたえた。
 「時代は今も昔も発展途上、良くなってるよ」
 「今に満足するってやつね」
 笑顔で談笑しているアキの顔が真剣になった。
 「それで今日はどういう用?」
 おどけながら法はこたえた。
 「ぢつはこれなんだけど」
 アキは法から手渡された写真を見ると、光に翳して見たりして法に言った。
 「ぢゃあこの写真部屋に一枚づつ全部に、貼っておいてあげるから全部よこしちゃいな」
 「ホントッ!?全部はちょっと、この後寄る所もあるし」
 「可能なだけでいいよ、それはそうと、焼いてくの?」
 こくりと頷いた法。
 アキの営む日焼けサロンで全身を焦がす法。
 ルームに入ると日焼けマシンの機会の中、寝転べる法。
 スマートスピーカーに話しかける法。
 「ヤッホーヤフー、落ち着く音楽を掛けて」 
 スマートスピーカは法の指示に従った。
 全裸ではなくブラジャーを付けてパンツを履いて日焼けをする法。
 足の裏も日焼けしようとするが少しして気づいた法。
 「ブラのラインとパンティーラインと足の裏」
 胸と股と足の裏が日焼けしてないのが聖の好みらしい。
 法の足の裏にはハート形のタトゥーがあった。インドに古くから伝わる因習でカースト制度というものがあり足の裏のタトゥーはスードラ・奴隷という意味に因んだものだった。法は自分のことを愛の奴隷だと言う。
 (はあー水星辺りまで行って太陽の直射日光で真黒(まぐろ)になりたいわー)
 受付にいるアキのもとに法がこんがり黒焼けで現れた。
 「いいじゃん!ゴン美、似合ってるよ」
 「アキさんありがとう、またね」
 手を振る法。
 見送るアキ。


Re:GCT


 旧友巡りも次で最後だ。
 カラオケボックスに入っていく法。
 一階のフロアで箒を掛けている男に法が声を掛けた。
 「オッス」
 驚いた様子の男は、そして気づいた。
 「法さんじゃないですか!元気してました?」
 笑顔で返す法。
 「元気よ、元気そうじゃん」
 「ええまあ、どうしたんですか今日は?」
 法を慕う<後輩の男>に事情を説明した。
 「これなんだけど・・・」
 写真を手渡された後輩の男は法に訊いた。
 「これなんですか?面白そうですね」
 「あと二十枚くらいあるんだけど」
 「いいですよ。貸してください。全部貰います」
 「ホントに?!ありがとう!助かる」
 後輩の男は顎に手を当て、片手で写真を束で持ち眺めると、ふんふんと一人頷いていた。
 後輩の男は言った。
 「これ各ルームに貼っときますね」
 「ありがとうーそうなのよ」
 手を振って後輩の男が勤めるカラオケボックスを後にする法。
 手を振り返して後輩の男は法を見送った。
 法が見えなくなると後輩の男は、法からもらった写真の束をゴミ箱に投げ捨てると、いなくなった法のほうを睨んでいた。


Re:HCT


 都内の聖の営む鏡屋に地下鉄で向かう法。
 地下鉄の中はお昼時もあってか閑散としていて、<女子高生二人組>が大きく幅を取って座ってゲラゲラ談笑している。
 ポールで出来た腰掛に背伸びして座っている<男子中学生>が、モバイルゲームをしているのをその周りを他二人の男子中学生がモバイルゲームを覗き込んで、一部で盛り上がっていた。
 地下鉄に揺れ<草臥れたサラリーマン>が法の目に映る。


Re:ICT


 「ホントなんだって!」
 聖の営む鏡屋で法が事の顛末を激白した。
 気にする様子もなく聖は、そんな法にあ~んと促した。
 何の気なしに法は口を開く。
 そこに噛んでいたガムを吐き捨てる聖。
 クチャクチャ噛むも。
 「~味ないよー」
 「当たり前じゃんオレが噛んでたんだから」
 そんな法がいる鏡屋の前の路地を通り過ぎたのは、名前不詳だった。
 法は座っている椅子の上で足をバタバタとさせて、口元に左手を右手はその名前不詳のほうを指さして聖に言った。
 「ほらほら!いた!窓の向こうにいたよ!あの男」
 聖は気怠さそうに法の言うことを聞いて、鏡屋の外に出て様子を伺った。
 聖が鏡屋から出たタイミングを見計らい名前不詳が鏡屋に入ってきた。
 受付の前の椅子に座っている法の前に立った名前不詳。
 ガクガクと震えながら名前不詳を見つめる法。
 名前不詳はテーブルに置いてある、加熱式のタバコの吸い殻が入ったアルミの灰皿を手に掴むと、乱暴に法の頭目がけて振り下ろした。
 ボッコンボッコンと鈍い音が鳴る。
 「ちょ痛い!やめて!」
 名前不詳は法に大声で乱暴に言った。
 「後、つけてんだからどこに行くとか分かるだろうが!!」
 「ちょ聖―!助けて!」
 中の様子がおかしいと聖が鏡屋の中へ戻ってきた。
 法を襲う名前不詳を見つけた聖は、すぐさま駆けつけた。
 法を叩いていた名前不詳は制止する聖を振り払うと、受付のテーブルに置いてあった、聖の車の鍵を奪うとそのまま表に出た。
 頭を抱えて蹲る法を介抱する聖。
 名前不詳は聖の車に乗り込み、車を走らせてその場から去っていった。
 聖は介抱している法の元から起き上がると、激怒して名前不詳を追った。
 ただ名前不詳は車の免許を持っていなかった。


Re:JCT


 聖が名前不詳を追って走っていると片足と片腕を引きずった名前不詳が歩いている。
 聖は通り過ぎる反対車線を走る車のボンネットで一回転して、名前不詳の胸元にフライングヘッドバットを見舞う。
 「オフッ!」
 声を出して倒れこむ名前不詳。
 少し先の電柱で自分の愛車が衝突していた。
 その場に座り込み悲惨な状況の愛車を見て聖はガックリと項垂れる。
 「あ―あ」
 そんな聖の後頭部を名前不詳が近くにあった角材で一発食らわせた。
 悶絶して起き上がる聖だが名前不詳はもうその場にはいなかった。


Re:KCT


 法の肩を抱いて、聖は病院にいた。
 名前不詳により負わされた頭の傷を網ネットを付けている二人。
 エレベーターに向かう法と聖。
 足早に二人を追い越すとエレベーターに乗り込み振り返る男。
 名前不詳だ!
 名前不詳も二人同様に怪我の治療に頭に網ネットを付けていた。
 法と聖に気づくや否や、「おおおおおおおお」と物凄い勢いで、エレベーターの閉めるのボタンを連打しながら最上階の行先ボタンを押した名前不詳。
 駆け足で近づく聖。
 エレベーターは閉まり、聖は一歩及ばなかった。
 エレベーターの中で勝利をしたかのように絶叫する名前不詳。
 「よし!よし!イエス!ざまあみろ!!」
 しかし名前不詳が押した最上階の行先はバリアフリー用のエレベーターで上の階が二階までしかない駐車場に続くものだった。
 階段を全力で駆け上がってくる聖を想像した名前不詳の恐怖は尋常なものではなかった。
 チーン
 エレベーターの到着音の後、扉は開かれた。
 その瞬間!
 名前不詳に聖の拳が一閃。
 「ガハッ」
 聖の拳を喰らい、エレベーターの中の後ろの壁にぶつかる名前不詳。
 そのまま蹲った名前不詳。
 蹲る名前不詳の前には聖が立っていた。
 聖を見上げる名前不詳。
 名前不詳を見下す聖。
 名前不詳が聖に向けて言った。
 「お前なんかに俺の気持ちがわかるもんか!」
 聖は息を整えるとポケットからナイフを取り出し言った。
 「うるせえ」
 ストッとナイフを名前不詳の太ももに投げ当てた。
 「ぎゃああああーいてえよー!お母ちゃーん!」
 聖は階段を下りていき名前不詳は激痛の痛みで、叫んでいた。


Re:LCT


 ハイウェイの上にレッドカーペットが敷かれており、その上を名前不詳が走っている。
 ハイウェイを走っている名前不詳の服が裂け肉が飛び散り骨が剥き出しになり、着ていた黒のタキシードがちりぢりに破けて、そこに敷かれていたレッドカーペットは途切れ、剥き出しになった名前不詳は粉々になり骨と骨をガランガランと鳴らせて消えていった。
 そこにオープンカーに乗った聖が花束を投げ捨てた。
 ワインレッドのオープンカーを運転する聖。
 その後ろの後部座席から法が、運転席にいる聖の首に腕をからませ車の二人乗りをしていた。
 法の口の中に咥えられている氷は、法の口の中で無になった。
 ハイウェイを車で走っているとトンネルに差し掛かった。
 二人を乗せた車はトンネルの中を入っていく。
 トンネルの中はオレンジ色の蛍光灯が幾つもあって法を不思議な気持ちにさせていた。
 少しすると声が聞こえてくる。
 牛ばっか食べて、この牛人間!
 ッ出木杉くんトランスしすぎだよ!
 ムム・・ムムムムムムム・・・
 でももしかしたらのび太のほうが深いのかもしれないなあー
 ZZZZZZZ
 法は後部座席で眠っていた。
 法の隣には体を丸めて、勾玉のように合わさった黒猫のミーと白猫のシーがこちらもお腹を膨らませて眠っていた。
 眠っている法のお腹も膨れている。
 どうやらお腹に子供がいるようだ。
 トンネルの出口が見えてきた。
 あたしがわたしに変わる頃~夢から目覚めて眠る瞬間(とき)~
 トンネルを抜ける頃、車の後部座席から立ち上がり法は両手を空に上げていた。
 あたしがわたしに変わる頃。平行線の視線を抜けると夜空が銀河だった。

Happy endless


この物語は創話(つくりばなし)、創話(そうわ)です

At the end of the book

あたしがわたしに変わる頃
~夢から目覚めて眠る{瞬間~

登場人物

・法(♀)

・聖(♂)

・名前不詳(♂)

・黒猫のミー(♀)

・白猫のシー(♀)

・大阪弁教室の講師(♂)

・駅員(♂)

・人工知能の一群(♂)

・ウェイトレス(♀)

・松田かたつむり(?)

・石崎コンロ(?)

・ホームレス二人(♂)

・工(♂)

・撮影スタッフ(♂)(♀)

・モデルの俳優(♂)

・警備員(♂)

・アキ(♀)

・ミカ(♀)

・後輩の男(♂)

・女子高生二人組(♀)

・男子中学生たち(♂)

・サラリーマン(♂)

・ヒステリックな女(♀)

・スネ夫(♂)

・出木杉(♂)

・ジャイアン(♂)

・のび太(♂)


From dear one to dear one

Same Star Same Shine

あたしがわたしに変わる頃
~夢から目覚めて眠る瞬間~
When I change to me
The moment you wake up from your dreams and sleep
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