口下手な少年は不幸を盗む
少年と盗癖
「またやっちまった」
いつの間にかポケットに入っていた可愛らしいアクセサリーを見、僕は大きくため息をついた。駅のホームは人であふれていたが、そんなことはおかまいなしだ。
すぐに持ち主を探して謝ろうかとも考えたが、やめた。
なんといえばいいのだろう。
「無意識に物を盗んでしまう病気なんです」
そう正直に話してもわかってもらえる訳がない。
適当にごまかそうかとも思った。
「落ちてましたよ」
とかね。
しかし僕は知らない人に話しかけられるほど社交的ではない。
ましてや相手は同い年くらいの女の子とくれば、緊張してしまって話をするどころではない。
僕は罪悪感にがっくりと肩を落とし、その場を離れた。

いつからだろうか。この奇妙な癖に気づいたのは。
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