【短編】会いたいと切に願う
いのりとどけ



そうよ、そうなのよ!

一五は始めっから私を振り回してたのよね。


それは一年経った今でも変わらず、私の心を引っ掻き回してて。


こんなにも会いたいって思うほどの人も初めてっていうのに、会えないもどかしさ。


ねぇ、一五。

あなたは今どこにいるの?

どこにいるのかさえ分からない。

どれだけ離れているかも分からない距離に、そろそろ限界なんだけど?


それにね、私、三月にはここ離れていっちゃうんだよ。


東京に就職が決まって、引っ越さなくちゃいけないの。


もうっ。

また会えるって期待させておきながら、何よこの仕打ち!



「はぁーあ……」



深くついたため息は真っ白な雲のようになり、目の前が霞んでしまうほどだった。


……私だけなのかなぁ。

こんなにもあなたに会いたいって思うのは。


あなたと私の心の間には、どれだけの距離があるの?


あーっ。しめっぽくなってきた。

やめたやめた。


……なんて頭では考えないようにしていても、手には一五から渡された紙を大事に握り締めていて。

うん、矛盾してるよね。


それに、暇さえあればここに来てるんだよね。



「うぅ……やっぱ寒い」



そう、一五と初めて会った場所。

デートスポットで有名なこの場所。



「あれから一年かぁ」



私の春はいつ来るのかな。

一五と出会ってから、ずっと冬のまま。


あ〜ぁ。早く結婚したかったのにな。


一五に出会って誰でもいいんじゃなくて、一五とって思うようになっちゃったから、一年間ずーっと独り身なんだよ!


そう言えば、一五ともこんな話したなぁ。





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