弔いのグラタン

 幕張のショッピングモール内のファミリーレストラン、四人掛けのテーブルに私とマユミサンは向かい合って座っていた。

 中学最後の春休み。

 お昼のピークを過ぎた店内で、注文した料理を待っている間、私は思い返していた。

『ショーチャン、駐車するときは、運転代わってね』
と、キャーキャー言いながら、グロリアを運転していたマユミサンを。

 あの時は教習中だったマユミサンが、さっき反対車線を挟んだここの駐車場に入り、シルバーの軽のお尻から白い枠内に、きっちりおさめたことを。

 私だって、化粧をするようになった。
 髪の毛だって、ワントーン明るくした。
 和食だって作れるようになった。

 変ったんだ。何もかも。あの時のままでいられるはずがない。

 目の前に座っているマユミサンと、楽しくお喋りしながらも、私の頭の中ではそんなことを考え、当たり前の現実に指先はチリチリしていた。

 訊いてしまおうか、訊かないべきか。

 訊いちゃいけないことなのは、わかってた。
 頭ではわかってるけど、心がついていかないのだ。

 なめらかで、マカロニはつるつるしていて、焦げ目がついたチーズはよく伸びた。
 味はしなかった。違う。思い出せない。

 思い出すのは、マユミサンに作ってもらえばよかったな、という後悔の気持ち。
 ねだることぐらいしておけばよかったな、という切ない気持ち。

 

 泡だて器でぐるぐるぐるぐる。
 滑らかなとろみを人差し指ですくう。
 いいお味。
 ベーコンを追加した耐熱皿に流し込む。
 軽く混ぜる。
 順番は、ピザ用チーズ、パルメザンチーズ、バターを2、3かけ。
 レンジに入れて、グラタンの絵が描かれているボタンを押す。
 大丈夫。
 オーブンレンジなのだ。

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