* Snow gift *
 息せき切らせて乗り込んだバスは学生でぎゅうぎゅう。

 パステルカラーの会話がやけに懐かしく感じて、それと同時に自分が走り抜けてきた距離の長さを不意に思い知らされる。

(わたしが高校生だったのって、いつだっけ?)

 指折り数えようとして、途中でやめた。

 だってなんだか、すごく……あはは……。

「ふぅ……」

 ほろり、とこぼれるため息。

 吊り革を持つ腕に頭をあずけて車窓から外を眺めると、真白なガードレールが寄り添うように走っていて、

(そういえば倒れるまで全力疾走したのって、いつが最後だったっけ?)

 ふと、そんなことが頭をよぎった。

 思えばいつの頃からか「疲れた」が口癖になっていて、気付けば誰かの“かかと”を眺めながら歩いていたような気がする。

 と──

「あ!!」

 一躍車内の注目の的になったわたしは、顔を真っ赤にする間もなく青ざめて、

(会社に遅刻の電話するの忘れてたぁぁぁ……)



 課長を納得させるだけの言い訳を考えるために必死に脳みそをフル回転させるのだった。

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