* Snow gift *
 休み時間を報せるチャイムがなるたびに、オレはアイツのそばを池のコイのように口をパクパクさせながら往復。

 で。

 授業時間を報せるチャイムがなるたびに、オレは水かえを忘れしおれた花のようにしょんぼりを繰り返していた。

 わかっちゃいる。

 わかっちゃいるんだ。

 今のオレがしなきゃいけないのが、行動で表す好意じゃなくて“言葉”で表す好意だってことぐらい。

 聞いた話じゃアイツは高校卒業後、県外の大学に進学するらしい。

 オレは地元の会社に就職が内定。

 つまり、本当のホントに、今日がラストチャンス。

 なのにオレときたら……。

 くそぅ!

 ほんのひとかけらの勇気すらないのかよ、オレってやつは!!

 もんもんうじうじを繰り返す内に学業タイムは滞りなく過ぎ去っていき──



“へたれ”の勲章を目尻に浮かべながらオレは帰路につくのだった。
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