雪国の春

昔の、雪は


 「おはよ!」
 「…」
 「おーはーよ!」
 「…」 
 「ちょっと沙雪?」
 「ん?あ、あっちゃん」
 
 教室でぼーっとしていたらしい私は、あっちゃんの声で我に返った。
 
 「も~また木村先輩のことでも考えてたんでしょ」
 「うぅ、痛いところを」
 「まぁ、1年が3年を好きになるってのは大変よね」
 「でしょ?もう、卒業しちゃうもん…雪、解けなきゃいいのに」
 「え~、雪、解けてくんなきゃ困るよー。だいたい卒業式の頃だってまだ雪いっぱいじゃん」
 「もぉ!あっちゃんはオトメゴコロがわかってない!」
 「だってあんた、小さい頃はよかったわよ?雪合戦し放題、かまくらとか雪だるま作ったりさぁ。雪も遊び道具だったけど…今じゃただの歩き難くさせる物体だもんね。北海道みたいに粉雪だったらいいのに」
 「ま、そうだけどさ。あたしだって雪がほとんどない都会がうらやましいけどさ。けどさぁ…」
 
 ガラガラ… 

 「授業始めるぞ~」
 「あ、先生来ちゃった」
 
 私の文句は先生の登場により中断させられ、あっちゃんはいそいそと自分の席へと戻っていった。


 
  *   *   *   *   *    *



 「はぁ…あっちゃんはもう、素敵な彼がいるんだから余裕よね~」

 独りっきりの帰り道。
 あっちゃんは彼氏さんと楽しそうに帰って行っちゃった。
 
 今日は部活もなくて先輩を見つけ出せなかった。

 「告白、しようかなぁ」
 
 独りでぼやきながら歩いていると、なんだか寂しくなってきた。

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