ケータイ恋愛小説家
雨はキライ
「あー……。雨降りそう」


綾乃が窓から手を出して、うらめしそうに外を見ていた。

空には幾重にも重なった雲が白からグレーのグラデーションを作っていた。

雨が降り出すのも時間の問題かもしれない。


「あーあ。週末だってのに、遊びに行く気にもなんないよ。雨だと髪が崩れるから嫌なんだよね」


そう言って、綾乃は自慢の巻き髪を指に巻きつけていた。

放課後の教室。

日直の仕事をこなす綾乃に付き合って、なんとなく学校に残っている。


「……ん。そだね」


「なぁにー? 元気ないじゃん?」


適当に答えた相槌に、綾乃が不思議そうな顔で覗き込む。


「え? そ…そんなことないよ!」


慌ててニカッて感じの笑顔を向けた。


ここんとこ、あたしはどうかしてる。

原因のわからない、苦い想いが胸に広がって、呼吸すら上手くできない。

気がつくとそれはため息となって口から漏れるばかりなのだ。


そしてまた、ふぅと誰にも気づかれないように息を吐いて、窓の外を見た。


「今日、何日だっけ?」


綾乃は日誌の黒い表紙を開きながら尋ねる。


「えーと…。8日だよ」


そう言いながら、わたしの頭には何かがひっかかった。


「あ……あああああああ! わ…忘れてたああああ!」
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