【SR】メッセージ―今は遠き夏―
思い出の場所

小樽の駅を降りると、繁人は歩道橋を渡り、通りをまっすぐと歩き始めた。

百夏も口をつぐんだまま、黙って後をついてゆく。

空気を胸いっぱいに吸い込んでも、空を見上げても、記憶に変化はないままだったことに、少しずつ焦りを感じていた。




突然、肩に受けた衝撃に顔を上げた百夏は、すれ違う人とぶつかったのだと気付く。

大きな荷物を抱えた女性は、少し嫌な顔を作って百夏をにらみつけた。

『これぞ“賞味期限切れ”の女!』

地面に落ちた週刊誌は特集記事を広げ、表紙が僅かに折れている。

慌てて拾い上げ、砂を払って手渡した。

ふわりと香水の匂いを漂わせたこの女性は、どうやら小樽駅に向かおうとしているらしい。

傍らに立つ娘らしき人物が、母を気遣って荷物を持った。


「文美から貰ったおみやげ、壊れていないかしら?」

「大丈夫よ、プチプチで包んでるから」

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