Bitter Love〜苦くて切ない恋〜

優しいキス

「あたし、中沢さんが好きかも」

そう言ったとたん、芯は大きく目を見開いた。

「雪ちゃん、何言ってるの?」

初めて外国語を聞いたと言うような感じで、芯が言った。

「中沢さん、結婚してるんだよ?」

「…わかってるわよ、それくらい」

「わかってるんだったら、何でそう言うの?」

芯は、何故だか怒っていた。

何怒ってるのよ。

「それに、好きの後ろにちゃんと“かも”って、ついていたでしょ」

「ついていたとしても、何で言うの?」

あたしは、ため息をついた。

「あのさ、何で怒ってるの?」

芯に影響されたのか、あたしの声も怒っていた。

キレ気味のあたしに、
「それは…」
と、芯が言いかけた時だった。

「どうしたの?」

中沢さんがきた。

突然の中沢さんの登場に芯は、
「いえ…」
と、首を横に振った。

「いつもの」

あたしの隣に座りながら、中沢さんが言った。

注文を受けた芯は手慣れた手つきで、シェーカーに材料を入れた。
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