音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~

夕ご飯





「ただいまー」


「おじゃまします」


玄関を開ければ、夕ご飯のいい匂いが広がりあたしの空腹度をアップさせる。


「ママー、夕ご飯はー?」


「樹くん、おかえり。 外は寒かったでしょ? 今、温かいご飯出すね。

まおは手伝って」


「はーい」


コートを脱ぎ、温かいご飯を求めて、あたしはキッチンへ駆け込んだ。

鍋のフタをパカッと開ければ……。


「カレーだ!」


「ご飯盛るだけだから持っていってね」



ママがお皿を3枚持ち、ご飯を盛っていた。

あたしはそのご飯の上に温かいカレーをかける。


ゆらゆらと湯気が上がりカレー独特の匂いが鼻を刺激し、お腹まで刺激した。


「まおちゃん、持っていくよ」


「熱いから気を付けてね」


いっくんが家に来る時はいっくんと理央ちゃんとあたしの3人で食べる。


理央ちゃんに「先に食べていてもいいんだよ?」と言っても「待っている」の一点張り。




< 28 / 557 >

この作品をシェア

pagetop