音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
Act.1

風邪





「具合が悪いのにどーして歩いて帰ってくるの! だから、熱なんて出すんでしょ?」


「…… はい」


雪が舞い散る中、駅まで理央ちゃんと一緒に歩いて帰った。 結局あたしは次の日、熱を出した。


「熱冷ましちゃんと飲んで寝てなさい」


「はーい」



なんとか昨日は無事に家に着いたけど、帰ってきてすぐあたしはベットに潜り込んだ。


案の定、せっかくの日曜日だというのに……。


「37,8℃か…」


脇に挟んだ体温計が鳴ったので、取り出し確認する。


37,8℃まで熱が上がってしまった。


枕元でママの怒りを通り越して呆れ返った話をボーっとする頭でなんとなく、整理する。


“少しくらいだったらいいかな?”って、あの時は思った。

まだ昨日はそれほど“具合悪い”って程じゃ無かったし……。


あぁ、こんな事考えていたら頭が痛くなってきた。


「はい、熱冷まし飲んで」


コップに“これでもかっ!!”というくらい並々と入っている水を口に含み、熱冷ましを一気に飲みこんだ。


「水は全部飲みなさい」


げー、最悪。 あたし、薬飲む時の水好きじゃないのに……。


でも、ご飯食べないんだからしょうがないか。


ママがコップ“イッパイ”に入れてきた水をしょうがなく全部飲み、あたしはゆっくり眠りに落ちる。




< 39 / 557 >

この作品をシェア

pagetop