音のない世界 ～もう戻らないこの瞬間～

聞き取りずらい？

「いってきまーす」


1日ゆっくり休んだ。 そのおかげで翌日は、すっかり体調は回復した。

それでも、いつものように家を出るのはギリギリ。


自転車を勢いよくこぎ、駅に着くともう沢山のサラリーマン、OL、学生がホームに並んでいる。


コートのポケットからイヤホンを取りだし、耳に着ける。


今日は菜々がいないから1人で、電車に乗る。 いっくんはいっくんで前の車両に行ってしまった。


その時――― “キキキキーーーー！！”


電車のブレーキ音が響き渡った。


とっさに、耳を抑える。


「…… なにこれ？」


聞きなれているブレーキ音なのに、やけに耳に響き――― 痛い。


あまりの痛さに、右耳を塞いでしまった。


音楽を再生する前だったとしても…… 何がおきたの？


…… 風邪は治った、熱もない。


でも…… 耳のつまりは、取れることなく、今日を迎えた。