達人
中伝
その日から俺は、城山達人の道場で寝泊まりする事になった。

常に達人のそばにいて、一挙手一投足を目にする事で、達人の達人たる所以を掴もうと考えたのだ。

早朝。

達人が起きるよりも早くに起床する。

そのつもりだった。

しかし。

朝一番に目が覚めた俺が見たものは。

「!?」

俺を見下ろす達人の顔だった。

「よく寝ていましたね、丹下君」

布団でやっと目を覚ましたばかりの俺の顔を覗きこみ、達人が笑う。

あの凄みのある、獣性を剥き出しにした笑いだ。

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