“目が届くところにいるのが一番いいから”

――……との理由でレナードの仕事場兼、住居である教会に住み始めて早一週間。

アリルアの街で人々に神様の教えを伝える傍ら、レナードは彼の父親の遺志を引き継いで、身寄りのない孤児達を引き取り、里親として彼らの世話をしている。

あたしはレナードの仕事の手伝いをしながら、その片手間にこの世界―――セラフィリアの事を色々と教わり、少しずつだけど理解し始めていた。

――……で、ここ一週間で分かったことはと言うと。

ここ、セラフィリアは映画さながらのファンタジーな世界だってこと。

まあ、お城だとか、騎士団っていう単語が飛び交っていた時点で、何となくそうかなあ、とは思っていたのだけれど。

これまで聞いた話を大まかに纏めるとこうだ。

あたしがいるアリルア国はエスヴァン大陸と呼ばれる西の大陸にあって、西大陸に点在する五つの国の中では最も勢力が強く、広大な大陸の実に三分の二の領土を有する大国だそうだ。

当然の事ながら、セラフィリアには電気や機械など、日本で当たり前に使っていたものは一切なく。

東大陸にあるミストリア帝国と呼ばれる、セラフィリアで一番の大きさを誇る国では、機械技術の研究が進められているらしいけれど、実用とまでは至っておらず、セラフィリアでは火や水、風などの自然の力、あとは魔力……要するに魔法の力を抽出して、それをエネルギー源として利用しているそうだ。

環境的にはとてもエコロジーでいいと思うけれど、便利社会から来たあたしにとっては一昔……いやそれよりも、もっと昔の時代に遡(さかのぼ)ったような感じで、正直、不便な事が多くて仕方がない。

水一つ汲むにしても、井戸から水を汲み上げなきゃいけないし、洗濯だってもちろん手洗い。冷蔵庫なんてないから、買い物だって一日最低二回は行かなきゃいけないし、お風呂を焚くのだって一苦労。

蛇口を捻れば水が出て、スイッチ一つ押すだけで火が熾せたり、灯りを点せたり、お風呂を沸かせたり。

そういう当たり前だった事ができなくなって、改めて、日本での暮らしが如何に快適だったのか、そのありがたみを思い知らされた。

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