オレンジ色に染まる夕日を浴びて、一段と輝きを増した剣が、魔物の胴体を捉え、一刀両断に断ち切る。

鋭い切っ先を持つ剣で切り付けられたのだから、当然、辺りは魔物の血で染まるのだろうと、頭を過ぎった凄惨な光景に身体を強張らせたものの、眩い光に包み込まれた魔物は断末魔の叫び声を上げると、まるで煙のように跡形もなく消えてしまった。

(って、な……何? 一体、何が起きて――……)

突然過ぎて何がなにやら分からない。

「――――大丈夫か?」

すっかり腰が抜けてしまったらしく、へたれ込んだまま、動けないでいるあたしの頭上で、凛とした声が響く。

声がした方を見上げたあたしの視界に映ったのは、夕映えに輝く白銀の鎧を身に纏い、吹き降ろす風に漆黒の長い髪を靡かせているアベルの姿。

キン、と乾いた金属音を響かせながら、鞘の中に剣を収めたアベルは藍色の瞳を静かに揺らせると、あたしの顔を見下ろした。


「――……アベ……ル?」


何でこんなところにアベルがいるんだろう、と思った矢先、緊張の糸が解れたのか。


あたしはそのまま、ふうっと意識を失った――――