喉の奥が張りつくような渇きを感じて、ふうっと瞼を持ち上げたあたしの目に真っ白い天井が映る。

――――……って、ここ、どこ?

目だけを動かして見上げていた天井から周囲へと視線を移動させたものの、見覚えがない。

「気がついたか?」

すぐ傍で響いた声に目を向ければ、掛けていた椅子から立ち上がり、長身を折り曲げるように上半身を屈めて、アベルが顔を覗き込む。

「気分はどうだ?」

「……喉、渇いた」

「そうか、少し待ってろ」

喉の渇きを訴えたあたしにそう言い残して、アベルはベッドから離れると、隣室にその姿を消す。

一人残されたあたしはベッドに身体を預けたまま、窓から見える空を見上げた。

(――……もう夜なんだ)

真っ赤に輝く大きな月が空に浮かんでいるのを見上げながら、そんな事をぼんやりと考えていると、

「――――おい」

不意に飛び込んで来るアベルの声。

「起きられるか?」

アベルの問いかけに小さく頷けば、アベルはベッドの脇のテーブルにグラスを置くと、あたしの背中に腕を回し、身体をゆっくりと起こしてくれた。

「ほら、飲めよ」

テーブルの上のグラスを手に取り、アベルが押し付けるようにグラスを差し出す。

表面に水滴を含んだグラスを手に持つと、指先にひんやりとした感触が伝わって心地よく、グラスの縁に唇をつけたあたしはグラスの中の水を一気に飲み干した。

冷たい水の感触が、渇き切った咽喉にすっと溶け込んでゆく。

幾分か気分が落ち着いて、あたしはグラスから唇を離すと深く息を吐いた。

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