「……ここは?」

「俺の部屋」

さっきからずっと気になっていた事を切り出せば、アベルが素っ気なく返す。

「……そう」

相変わらず、無愛想なアベルの対応に、それ以上何も聞けず黙り込む。

……助けてもらったお礼を言いたいのにな。

そう思いつつも、話し出すタイミングが掴めず、空になったグラスに視線を落とす。

「――……よく気を失う奴だな」

掌の上でグラスを転がしながら、沈黙を弄(もてあそ)んでいたら、アベルが苦笑いを溢す。

表情らしい表情を初めて見せたアベルに驚いて、あたしは思わず、呼吸をするのも忘れて、アベルの顔をじいっ、と凝視してしまった。

「――……って何だよ?」

目を見開いて凝視するあたしを見て、アベルが怪訝そうな表情を浮かべる。

「え……あ、ううんっ、な、何でもない」

アベルの表情が曇った事に気がついて、慌てて首を横に振ったものの。

う……うわあ、お、驚いたあ。

いつも無表情か、仏頂面のどちらかだから、笑わないんだとばかり思ってた……でも、笑うんだ、この人も。

何だかそう思うと少しだけ、アベルにも親近感が湧いてくる。

「あ……あの……助けてくれてありがとう」

なかなかタイミングが掴めず、言い出せなかった言葉を口にすれば、アベルは呆れたように溜め息を吐いた。

「っていうか、お前みたいな無鉄砲なヤツ、初めて会った。剣も魔法も使えないくせに無茶しすぎなんだよ」

「だ……だって、ああいう状況だったんだもん。仕方ないでしょ」

嫌味を言われ、ふいっ、と視線を逸らす。

会話が全然繋がらなくて、重苦しい沈黙に息苦しさを感じていたら、指先に何か温かいものが触れた。