翌朝、いつもより早く起こされたあたしはレナードに連れられ、街外れに建つ大きな屋敷に向かった。

屋敷の入り口には看板らしきものが置かれていて、目の前に建つ屋敷が何かの“お店”らしい事は分かったものの、文字が読めないあたしにはそれ以上の事は何も分からなかった。

文字――……というよりは記号に近いそれの下には、申し訳ない程度の絵が描かれていて、何となくその絵が気になって、あたしはじいっ、と看板を見据えた。

背中に翼らしきものを持つ、蜥蜴(とかげ)のような動物が、後ろ足で立ち上がっているイラストはお世辞にも上手いとは言えない。

う――ん……何だろうなあ、これ。

首を捻って考えてみるけれど、ある意味、芸術的に下手過ぎるイラストを何度見たところで、それが何なのか分からず、あたしはレナードの服の袖を引っ張ると、店の中に入ろうとしたレナードを引き止めた。

「ねえ……一つ質問していい? ここって何のお店?」

「それは内緒♪」

看板のイラストを差して聞けば、レナードは意味深な笑みを浮かべると、茶目っ気たっぷり、ウィンクをしてみせる。

「中に入れば分かるよ。さあ行こうか」

そう言って背中を押すレナードは何だかとても楽しそうだ。

(……何だか怪しいなあ)

レナードの態度が怪しければ、看板に描かれたヘンテコな生き物の絵も怪しい。

本能的に危険な香りを感じて、中に入るのを渋がったものの、レナードはいいから、いいからの一点張りで聞く耳を持たない。

強引に背中を押され、屋敷の大きな扉を開けば、からんころん、と涼しげな鈴の音が響いた。

「あー、ちょっと待っておくれ!」

鈴の音が鳴り終わらない内から、張りのある大きな声が、カウンターの奥から飛んでくる。

看板がある=お店の図式を勝手に思い描いていたけれど、だだっ広い部屋にはカウンターとその後ろに棚が一つあるだけで、商品棚は愚か、商品と思しきものすら見当たらない。

(――……って店じゃないのかな?)

辺りをきょろきょろ見回していると、カウンターの下からまん丸い顔の小太り……否、少しばかり豊満なおばさんがひょこり、と顔を覗かせた。

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