「……おい!」

声と同時に誰かが身体を揺さぶる。

うーん……うるさいなあ。

耳元で響く大きな声と、ゆさゆさと身体を揺さぶる振動。

それらにあたしの意識は否応にも覚醒する。

「おい、起きろって! お――いッ!」

も――ッ! うるさいッ! そんなに騒がなくても聞こえてるわよッ!

瞼の向こうの人物が、耳元であまりに大騒ぎするもんだから、あたしは起き上がろうとした。

けど。

どうしようもなく身体が重たくて、どんなに頑張っても、瞼すら持ち上げられない。

にも拘わらず、瞼の向こうの相手は更に激しく、あたしの身体を揺さぶる。

その上、さっきよりもバカデカイ声で。

「おいッ! 起・き・ろ――――ッ!!!」

と喚く。

だから耳元で大声出さないでよっ!

きんきん響く声に抗議してやりたかったけれど、声すら出せない。

って何? 一体、何がどうなってるの?

意識はあるのに身体が動かせない事に戸惑っていると、

「諦めろよ、レナード。そいつ絶対、死んでるから」

耳元で騒ぐ声の主とは違う、凛と澄んだ別の声が、不意に鼓膜の中に飛び込んできた。

って、あたしは生きてるわよ! 勝手に殺さないでっ!

と叫ぶものの、あくまで心の叫び。

瞼の向こうにいるであろう人物に聞こえるはずもなく。

「でも、心臓は動いてるよ。アベル」

「ったく……しょうがないな……」

本人の意思とは裏腹に、動かない瞼の向こう側で勝手に進む会話。

と、覗き込んでいる人の気配が、もう一つ増えたと思った瞬間。

「って、アベル? 何する……うわッ!!」

耳元で騒いでいた声の主の慌てたような声。

と同時に。


ザッバ――――――ンッ!!


突然、降りかかってくる冷たい感触。

「き……きゃああああ―――――ッッ!?」

冷たい感触に驚いて、思わず、悲鳴を上げたあたしはガバッと勢いよく起き上がると、

「……って、いきなり何すんのよッ! 冷たいじゃないッ!」

そう怒鳴っていた。

この作品のキーワード
騎士  長編  冒険  ファンタジー  トリップ  異世界  すれ違い  溺愛  年の差 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。