幸せの契約
歓声とざわめきが広がるなか


犬居さんがゆっくりステージに立つ



一見は身なりのいい執事

でも
彼は何の迷いもなくマイクを取った


「素顔で皆様の前に立つのは初めてになりますが、萩乃宮コーポレーションの一社員として、まだまだ若輩ではございますが、皆さま方のご指導ご鞭撻を受けて、この会社を世界一の企業にできるよう、邁進してまいりますので

どうぞ、よろしくお願いいたします。」


いつもの丁寧な口調

いつもの燕尾服


なのに
ステージに立つ彼は紛れもなく萩乃宮財閥の御曹司としての気品とオーラを放っていた



混乱して目眩がする


犬居さんが大和さん!?


犬居さんが大和さんってことは…私の執事をずっとしてたのも…



私が好きになったのも…



大和さん…?!



頭は突然の状況にうまく回転できない


ただ立ち尽くす私の前に
赤毛の男の人が立った


「混乱してるみたいだな?」
そこには今まで大和さんだと思ってた人


「あなたはいったい誰ですか?」


「僕の本当の名前はクリス・ビンセント・萩乃宮。大和の従弟だよ。」




犬居さんの従弟!?



間違えた



大和さん…


「ずっと騙してて、悪かったよ。詳しい事情は大和から聞いてくれ。

じゃ、またね。」



スタスタ行ってしまった


なんか


あっさりしすぎて
拍子抜けしちゃう…
< 208 / 214 >

この作品をシェア

pagetop