悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
6.abbadare
■abbadare (アッバダーレ 『注意せよ』)


なんとなく、寝つきの悪いまま翌朝を迎えた。
朝食のため、下に降りた私は思わず言葉を失った。

……私の席で朝食をとっている、黒スーツの男は、誰?

うっとりするような素敵な所作で、鮭を口に運んでいる。

透き通るような白い肌、それを飾る黒い髪。
かっこいいとか、素敵とかそういうレベルを突き抜けている。

人のオーラが見える、なんて感じたことはなかったけれど。

これほど近づき難く、それでいて人目を惹きつける<何か>を持っている人を見たのは初めてだった。

しかも。

それが、私の日常の原点とも言えるべき食卓で朝食をとっているなんて……。

「あら、きよみちゃん。
 こんなに早く起きるなんて思わなくて」

私に気づいたお母さんが驚いたように声を掛ける。

私が早く起きるかどうか、以前の問題じゃない?

「パンでいいわよね」

……別段そこに異存はないですが。

そちらに座ってらっしゃる方は、いったいどなたなのでしょうか?
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