悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
7.misterioso
■misterioso (ミステリオーソ 『神秘的な、不思議な』)


私たちはタクシーに乗って、志保さんを家に送り届けた。

「あの、ね。
 この近くに遅咲きの桜が咲いている神社があるの。
 そんなに有名じゃないから、人も少ないと思うんだ。
 行って見ない?」

すぐに家に帰るのが嫌で、潤を誘ったのは私の方だった。

「いいよ」

潤はいつもと同じように、子犬を思わせるくるんとした瞳で穏やかに頷いた。
差し伸べられた手をいつもより少し強く握ってしまうのは、やっぱりちょっと嫉妬してしまったのかもしれない。

「……いったい、どういう、こと?」

思ったとおり、その寂れた神社には人影はなく、桜の大木が一本。
今を盛りにとばかりに花を咲かせていた。

それを見上げ、コーラの缶を開けながら潤に聞く。

「そうだねー、いくらなんでも、全部秘密じゃ気になるよね」

少し、困ったような顔で桜を見つめたままそういうと、潤はごくりと喉を鳴らしてコーラを飲んだ。

ブラウンの髪が、春風に吹かれてさらりと揺れた。
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