悪魔は甘く微笑んで【恋人は魔王様 番外編◇ドリーム小説】
9.dolce
■dolce(ドルチェ『甘く柔らかに』)


いつもより、グレードアップした服に身を包む。

ドキ ドキ ドキ ドキ

高鳴る心臓は、私から平常心を奪っていく。
少しずつ、体温が失われていく手に、幾度も息を吹きかける。

変なの。
季節はもう初夏だっていうのに。

「キヨミ」

一人、部屋の隅で座っていた私に声を掛けてきたのは潤。
ジーンズにTシャツというラフな姿。
着飾っている私とはまるで対照的。

潤が手を伸ばす。
触れた手は、とても暖かくて。

冷えた私の指先は、彼の体温を奪おうと必死になっているようにさえ思えた。

「緊張してるの?」

耳元に擽るような甘い声。

「だって」

だって。
誰だって、こんなときは緊張くらいするわよ。

決まってるじゃない。


「でも、緊張しているキヨミも可愛いよ」

潤は無邪気に笑ってそう言うと、最近では挨拶代わり? っていうくらい頻繁に交わしているキスを、私の唇にそっと落とす。
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