幼なじみ〜first love〜

絢音―side―

―――……



「温泉、すごくよかったね」




沙羅は長い髪の毛をタオルで拭きながら言った。




「………うん」




あたしと沙羅は、お風呂から上がり部屋に戻ろうと、ホテルの廊下を歩いていた。




あたしは、沙羅から思わず聞かされた蒼の事で、動揺していた。




蒼が…泣いてる…?




どうして……




蒼は…幸せじゃないの…?




蒼は沙羅を好きで

沙羅は蒼を好き



なのにどうして……



何が蒼を苦しめているの…?



哀しい過去も

苦しんだ心も



沙羅が癒してくれたんじゃないの…?




「あっ…遊也くん…」




沙羅の声に立ち止まると、遊也がタバコを吸って、ジュースの自動販売機に寄っ掛かって立っていた。




「あっ、じゃぁ沙羅…先に部屋戻ってるね…」




そう言って沙羅は、あたしたちに気を使い、ひとりで先に部屋へと戻って行った。




「遊也……」




「せっかくのクリスマスイブやし…絢音とちょっとでも2人でおりたい思うて…」




差し伸べてくれた遊也の手を握ると、そのまま身体を引き寄せられた。




「……遊也…苦しいよ…」




遊也の腕の力が強くて、苦しい…




「おまえ…大丈夫なん…?」




「………ん?」




「蒼のことや……久しぶりに会うてみて…つらくないんか…?」




「……ん…平気」




遊也を傷つけたくないのに



何で

傷つけたくないと

思えば思うほど




嘘をついてしまうの…?




蒼のことが頭から

離れないよ……




沙羅の一言それだけで

心がまたグチャグチャになってく……




「………ッつー…!」




「遊也?!どしたのっ!?」




遊也が片手で頭を押さえて、しゃがみこんだ。
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