幼なじみ〜first love〜

遊也―side―


――…あまりに突然の宣告やった。




俺は思わず笑うてしもた。




だってそうやろ…?




そんなん信じろって方が


難しいやろ…?




“余命は半年から一年と考えてください…”




今まで元気やったのに…?




“治療の方法によっては、いくらか延ばすことは出来ます”




俺…死ぬんか…?



ほんまに…?




俺の顔を見て、“残念です”と淡々と話す医者。




慣れてるんやろな


人の死を見届けることに




いちいち悲しんでたら


医者なんか務まらんわな




俺は、すぐに実感が湧くわけがなく、この医者と同じくらい冷静やった。




“一ノ瀬さん…ご家族は…”




“おらへんよ”




実感なんて

わくわけないやん




頭痛は睡眠不足やと思ってたし。




疲れてたんや




そや…絢音の前で倒れてしもうて



絢音…今頃、心配してるやろな



大丈夫やろか…?




俺は絢音のことが気になっていた。




“一ノ瀬さん…大丈夫ですか?”




何を大丈夫と言えばいいんやろか?




これは夢で


俺は悪い夢を見てるんやって




そう…思うて。


せやから信じなくてええ



こんなん嘘やもん



死ぬって言われて



俺、笑うてるし



早く夢から覚めたい




俺は長い長い


夢を見てるんや…――
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