幼なじみ〜first love〜

絢音―side―

「お願いします…!!俺たちのこと…許してください!!」




蒼は、床に土下座をして頭を下げている。




「何度、お願いされても…無理なものは無理なんだ」




パパはソファから立ち上がり、あたしたちに背を向けた。




「パパ……お願い…」




あたしの頬には涙が伝う。




「絢音、全ての真実を知っても、蒼と一緒にいたいのか…?……おまえたちに何も罪はない。わかってる…全てパパのせいだ。」




パパを恨むとか


パパを憎むとか


パパを責める気なんかない




「なぁ…絢音、パパはママを裏切り、蒼のお母さんを追いこみ、水嶋家を崩壊させてしまった。私のせいで、みずほさんを死なせてしまった。蒼のお父さんだって、自分の息子だと思って育ててきただろうに…パパは取り返しのつかない罪を犯した。蒼は私の息子だ…けれど絢音の父でありたい…」




「涼介さん…俺は、これからもあなたを父とは思いませんし、思えませんから安心してください。俺にとってあなたは、“絢音の父親”です」




蒼は表情ひとつ変えずに言った。




「…それでも……決して癒えることのない深い傷を瑠璃子にも与えてしまった…瑠璃子は、蒼が憎くてたまらないはずだ…私を憎むのは当然だが…。それに絢音…大切な娘にまで…消えない悲しみを…」




あたしは生まれてすぐ


取り替えられた


蒼のお母さんの手によって




パパとママは


あたしの本当のパパとママじゃない




あたしを産んでくれた人は


どこか知らない場所で生きてる




真実を知らずに


パパとママの本当の娘を育ててる




けどもし…こうなる運命じゃなかったら?




あたしは蒼と出逢えなかった




蒼と愛し合うことはなかった




大切な友達にも出逢えなかった
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