つま先立ちの恋
‡9月



《1年雪組、孫灯歌さん!! 至急放送室に来てください!!!》


「………ふへ?」


昼休み、パペちゃんと一緒に教室でお弁当を食べていると、突然の呼び出しがかかった。私はフォークをくわえたまま目をパチパチとさせる。


「今の声、葵ちゃんだよねぇ?」

『何だか穏やかならぬ口調だったね。何かあったのかな?』

パペちゃんの左手のカエルくんが口をパクパクさせた。ちなみに右手はしっかりと箸を握っている。

いつもマイクの前では女優なのに、まるで背中にピストルでも突き付けられてるみたいな切羽詰まった声だった。ザワザワしていた教室もシン、としてみんな私に注目してるし。


ま、気にしないけどさ。


それにすぐみんな、自分のことに戻るだろうし。


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