『私も歩けばイケメンにあたる♪』
②入学

水沼家の次男、

との最低な出会いからほぼひと月。

春休みの間中、
私はほとんど毎日のように雅と会うか、電話をしていた。

話の内容といえば、ほとんどが、清への文句だ。

なぜって、あいつは私に会うたび、


バカ、だの
ブス、だの
ガキ、だの


むかつく言葉を吐き捨てて去っていくのだ。


私が無視しようとしても、
あいつの方が一枚上手で、

気づくと、むこうのペースになってしまい、
私が一人で地団太を踏む、という繰り返しが続いていた。


母との話し合いも、機会を逸すると
私の勇気が風船のようにしぼんでしまい、
今はとてもそんな気になれなかった。


しかし、あいつ・・清のことを除けば、
水沼家での生活は、想像以上に快適だった。


おじさん

--優一さんは変だし、
お父さんはまだ早いので、
無難にこう呼ぶことになった--

は、仕事が忙しそうだが、
毎朝朝食を一緒にとってくれて、とても話しやすいし、


心さんは、家の周りを案内してくれたり、
買い物に付き合ってくれたり、

--家具の買い替えは遠慮したけど--

こちらが気を使わないようにしながら、
細やかに気を配ってくれる。


範君は、部活で忙しいらしく

--サッカー部のキャプテンだそう--

朝も早くから家を出て、夜も帰りが遅いので、
一緒に食事をすることはめったにないが、

会えば照れたように、挨拶をしてくれるし、
時々は好きな音楽のことで盛り上がったりもした。


お手伝いの香(かおり)さん

--お手伝い!!
さすが金持ちといおうか、
ちょうど心さんが生まれる前に、つわりで、家事が大変だからと雇われ、
以来20年以上、昼間だけこの家で働いてるんだそうだ--

は、4人の男の子がいるらしく、母より少し年上だ。
肝っ玉母さんといった風情で、
あっという間に母とも私とも仲良しになった。



とても、快適だ。


・・・表面上は。

















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