砂漠の王と拾われ花嫁

信頼

ラシッドとアーメッドが話している間も莉世の涙は止まる事がない。


「そんなに泣くと体中の水分がなくなるぞ?」


頭の上に諭すような優しい声が聞こえた。



「・・・ヒック・・・そ・・ヒック・・・そんなわけ・・ない・・・」



この人は慰めてくれているの?



「お、ヒック・・・お願いです・・・あたしを・・・日本へ帰して・・・」


そう言って泣く少女にラシッドは目を奪われる。


「名前をなんと言った?」


さっき少女が言った言葉に驚いて名前は記憶されなかった。


「野山 莉世です・・・リセ・・・」


再び名前を言うと涙がポロポロとこぼれ始めた。


「リセ・・・・」


この国の発音ではない、すべてこの少女は変わっていた。



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