砂漠の王と拾われ花嫁
鉄格子のそばに設置されたランプの灯りが、莉世のいる牢屋を照らしていた。四室ある牢屋には、罪人は収監されておらず莉世だけだ。
人の気配がしても、莉世は牢屋の真ん中に身体を丸めて横たわったまま動かない。
アーメッドは牢屋の入口に立っていた番兵に鍵を開けさせ、中へ入ると莉世に近づく。
「娘、起きろ」
莉世の顔の方を覗き込むようにして、アーメッドがぶっきらぼうに声をかける。
その様子をラシッドは鉄格子の外から見ていた。だが横たわっている娘がピクリとも動かないのを見て中へ入り、ぐったりした身体を抱き上げる。
「なんということだ。ひどい熱だ!」
ラシッドは抱き上げた娘の身体の熱さに驚く。
「ん……」
意識のなかった莉世は、抱き上げられてうるさそうにラシッドの手から逃れようと身じろぐ。
「……ほっといて……痛い……っはぁ……」
意識が戻れば、日焼けの痛みと頭痛がぶり返す。耐えられない莉世は再びラシッドの腕の中で意識を失った。
「侍医を呼べ!」
アーメッドに命令したラシッドは、莉世を抱きかかえ牢屋から出た。
「ラシッドさま! ラシッドさまが気にする娘ではございません。その娘はわたしが」
わが国の王が薄汚い娘を抱いて連れていくことはないと、青ざめながら急いで後を追うアーメッド。
「よい! お前は早く侍医を呼べ!」
莉世を抱きかかえたラシッドは、表情を曇らせて牢屋を出ると、そこから一番離れた位置にあるザハブ宮へ向かう。
ザハブ宮とは、この王宮の王が住む宮。その奥にハーレム宮があるが、現在そこに住む者はいない。
ラシッドは莉世を自分の寝所に連れていった。
天蓋付きの寝台に寝かせて娘をよく見れば、きめが細かく象牙のようだったであろう肌は赤くなり痛々しく、唇はかさかさに乾ききって血がにじんでいた。
しかし、こんな状態でもこの娘が美しいとラシッドは思った。
アーメッドは、王の神聖な寝台を薄汚い娘に使わせたことに驚きを隠しながら近づく。
人の気配がしても、莉世は牢屋の真ん中に身体を丸めて横たわったまま動かない。
アーメッドは牢屋の入口に立っていた番兵に鍵を開けさせ、中へ入ると莉世に近づく。
「娘、起きろ」
莉世の顔の方を覗き込むようにして、アーメッドがぶっきらぼうに声をかける。
その様子をラシッドは鉄格子の外から見ていた。だが横たわっている娘がピクリとも動かないのを見て中へ入り、ぐったりした身体を抱き上げる。
「なんということだ。ひどい熱だ!」
ラシッドは抱き上げた娘の身体の熱さに驚く。
「ん……」
意識のなかった莉世は、抱き上げられてうるさそうにラシッドの手から逃れようと身じろぐ。
「……ほっといて……痛い……っはぁ……」
意識が戻れば、日焼けの痛みと頭痛がぶり返す。耐えられない莉世は再びラシッドの腕の中で意識を失った。
「侍医を呼べ!」
アーメッドに命令したラシッドは、莉世を抱きかかえ牢屋から出た。
「ラシッドさま! ラシッドさまが気にする娘ではございません。その娘はわたしが」
わが国の王が薄汚い娘を抱いて連れていくことはないと、青ざめながら急いで後を追うアーメッド。
「よい! お前は早く侍医を呼べ!」
莉世を抱きかかえたラシッドは、表情を曇らせて牢屋を出ると、そこから一番離れた位置にあるザハブ宮へ向かう。
ザハブ宮とは、この王宮の王が住む宮。その奥にハーレム宮があるが、現在そこに住む者はいない。
ラシッドは莉世を自分の寝所に連れていった。
天蓋付きの寝台に寝かせて娘をよく見れば、きめが細かく象牙のようだったであろう肌は赤くなり痛々しく、唇はかさかさに乾ききって血がにじんでいた。
しかし、こんな状態でもこの娘が美しいとラシッドは思った。
アーメッドは、王の神聖な寝台を薄汚い娘に使わせたことに驚きを隠しながら近づく。