旦那様は高校教師
第1章 春(4月)

入学式



真新しい制服に身を包み、準備を整え私は振り返る。



「伯父さん伯母さん、行って来ます」



「あっ、ほたる。私は茜の入学式へ行くから、あんたは1人で行きなさい!」



「はい…」



伯母さんの冷たい口調はいつもの事。



気にしない気にしない。


私はそう自分に言い聞かせ、静かに玄関のドアを閉めると、思い切り外の空気を吸い込んだ。



スーーーッ。



ハーーーッ。



うん、今日もしっかりしなくちゃ。



私は幼い頃、両親を事故で亡くし、祖母が引き取り育ててくれた。



でも6才の時、祖母は両親の元へ旅立ち、親戚の家を点々としながら、最後に辿り着いたのが今の家。



祖母は私を大切に育ててくれてたけど、何処の家へ行っても歓迎はされず『何の為に生まれてきたのだろう』といつも心の中で考えていた。





< 1 / 743 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop