私の中の眠れるワタシ

未遂




浴槽から引きずり出され、濡れた身体のまま部屋まで担がれた。

その間、ひたすら眠気が襲う。


−−朦朧とする意識の中で、母親の声もした。

颯生が電話で呼んだようだった。

母はわざと明るい調子で、ワタシに声をかけたが、手首の傷を見て、黙って目を背けた。

颯生は母に、これ以上話しかけないで下さいと言う代わりに、

「お母さん。」

と言って制止するように首をふった。



−−−手首ガ、笑ッテイル。



全体的に細かい傷で、赤くただれたようになっているが、その中央に太く、はじからはじまで、大きな口がおかしそうに、笑っていた。

そこからまだ、サラサラと言葉がこぼれているようだった。


『タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ……』


ついさっきまで、夢中になって痛みを感じなくなるくらいに、この口と会話できていたワタシなのに。


今は、この傷が猛烈に怖くなる。





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