粉雪
友達
『―――酒井!!
ちょっと、こっち来て!!』



11月になり、相変わらずあたしはバイトとしてファミレスの仕事に励んでいた。



「何ですか~?」


マネージャーに呼ばれ、スタッフルームに戻った。


見るとそこには、見慣れない女の子が一人。



『紹介するわ!
今日から入った、安西香澄さん。
酒井と同い年だから、色々教えてやってくれ。』



マネージャーの後ろに居る新人のバイトの子は、

身なりもしっかりしていて、まるでお嬢様みたいだった。



「…酒井千里です。よろしく。」


適当に挨拶をし、マネージャーに再び顔を向けた。


「てゆーか何であたしなんですか?
ジャーマネが教えれば良いじゃん。」



面倒なことは、一番嫌いなのに。



『…勘弁してくれよ…。
社員全員、来月の本社会議の準備で大忙しなんだよ。
なぁ?酒井が一番適任だろ?』


両手の平を合わせて頼み込むマネージャーに、ため息をついた。


“わかりましたよ”と口を尖らせながら、マニュアルを思い浮かべて口を開く。



「とりあえず、厨房からみんなの動き見ててよ。
適当にみんなに合わせて“ありがとうございました”とか、“いらっしゃいませ”って言ってりゃ良いから。
あとは、メニュー必死で覚えて?」


『…はい。
あの、よろしくお願いします。』


遠慮がちに言う香澄に、ため息をついた。



「タメなんでしょ?
敬語とか要らないから。」


メニュー表を渡し、頭を下げる香澄に軽く笑った。


彼女の第一印象は、“真面目”ってのと、“一生懸命”ってカンジ。


まるで、あたしとは正反対だ。




こんな些細な出会いが、あたし達の運命を狂わせた。


あたしが狂わせたの?


隼人が狂わせたの?


それとも、この女…?



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