粉雪
スナック
―――夏になり、あたしは自分のお店を持った。


隼人に貰ったお金で開いたのは、小さなスナック。


母親と同じスナックなのは、結局あたしにも同じ血が流れてる証拠なんだろう。


でもね、何も気にせずにお酒が飲めるから。



隼人が死んでから、あたしはお酒に頼るばかりの生活を送っていた。


“生きる”って道を選んだけど、やっぱり隼人の居ない生活は、辛すぎるから。




“幸せにするとは言えない。
でも、人より良い生活させる自信はあるから”


ホントにその通りだった。


あたしが今、こんなことをやっているのは、全て隼人のおかげなんだ。




それから少しして、あたしのお店は何とか軌道に乗った。



―カラン…

『ちーす!』


「あっ、マツじゃん!
いらっしゃ~い♪」



マツの仕事もわりと順調らしく、頻繁にあたしの店に来てくれていた。


それぞれの新しい生活を、必死に送る日々。




『…今日、客少ねぇじゃん。』


「そうなの~。
みんな、花火大会行っちゃった…。」


グラスに氷を入れ、キープしているボトルのお酒を注いだ。


そしてそれを、マツに差し出す。




『千里は行かねぇの?』


「…一人で行ってもつまんないじゃん。
あたし、迷子になりたくないし。」


『ははっ!
俺に言っとけば、連れてってやったのに。』


マルメンを咥えたマツは、困ったように笑った。



「…やだよ。
イカついマツと一緒に歩いてたら、地元のヤンキーに絡まれるじゃん。」


『ははっ!
大丈夫だよ、喧嘩は強いですから!(笑)』



毎日毎日、マツはあたしに色んなことを話してくれて。


結構頼りにしてる“お兄ちゃん”みたいな存在だ。



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