粉雪
―――朝、隼人を見送り、仕事に向かった。


それから5時に終わり、その足で薬局に向かった。


検査薬を買うために。


こんなことが現実に起きているなんて、考えたくもなかった。


家に帰るまでの間、悪い想像ばかりが頭を巡る。


足取りは重く、だけど早く真実を知らなければならない。


もしかしたら、出来てないかもしれないんだから。




家に帰り、震える手で箱を開け、トイレに篭った。


1分を待たずして、小窓にラインが浮かび上がる。


何度見ても、それは変わらなくて。



「―――ッ!」



…間違いなく、あたしは妊娠している…。


その事実を受け止めきれず、言葉を失った。



隼人に、何て言えばいいの…?


頭の中はそればかり。


膝を抱え、ソファーに蹲った。


時計の音は部屋中を支配し、だけどあたしの中には鳴り響くのは、

心臓の音以外になくて。



言えば、隼人は仕事をやめてくれるんだろうか?


だけど、“やめない”って言われた時、あたしはどんな顔をすれば良いの?


それより隼人は、喜んでくれるの?


もしも“堕ろせ”なんて言われたら、あたしはどうすれば良いの?


もしかしたら、もぉ一緒に居られないかもしれない。


そんなの、耐えられないよ…。


その時あたしは、子供と隼人、どっちを取れば良いの?




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