准教授 高野先生のこと

片想いの限界は必ずやってくる。


たぶん――

心の中には想いを溜めおくための入れ物があって。

恋をすると、届けられない想いの雫はその中へ……。

一滴、また一滴と落ちていく。


恋しい想い、切ない想い。

その入れ物に想いが満ちるほど、何故か豊かな気持ちになる。

それは――

こんなにも誰かに恋してるって、そんな自分自身に酔っているから。


けれども――

入れ物にだって想いを溜めおく限界があるから。

無理をしようものならば、たちまち心は大洪水……。


こうなると――

相手に想いをぶっちゃけるか、想いを断ち切るほかはない。

でも――

そう簡単には、どちらかを選ぶことも難しく。

選んだとて、実行することも苦しくて。


そうこうするうちに――

止め処なく溢れ出る切ない想いで、心の中はいっぱいいっぱい。

苦しくて、くるしくて、どうしようもなく苦しくて。

だけどどうにもできない気持ち。


片思いなんて……。


確かに初めは、想うだけで?想えるだけで?それでも十分楽しいなんて夢に酔う。

だけど――

そのうち必ず、切なすぎて苦しくなる。

いったきりの届かぬ想いも、返してもらえぬ相手の想いも。






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